『マグロの刺身』|親孝行大賞受賞作品

福島県白河市
月見どろぼう様(50代男性)

実家で暮らしていた父も兄も姉も相次いで亡くなり、母が一人暮らしになった。私は週末になると、会社から実家へ直行する。

翌日の母の通院の付き添いのため泊まるのだ。通院の朝は早い。順番を取るために母と朝7時には家を出る。待ち時間と診察、そして点滴で午前は終わってしまう。病院の売店で、おにぎりを買って、車の中で食べながら家へ帰る。

家に戻ると母は、ほっとするのか「夕飯はマグロの刺身が食いてえなあ」もう夕飯を気にしている。

私は苦笑いして「タバコ一本吸わせてくれ」という。母の夕飯は早い。午後4時には食べたがる。

私はスーパーから二人前のマグロの刺身を買ってくる。母は小鉢に大量のしょうゆを注ぎ入れ、わさびを溶いて、マグロをどっぷり浸して食べる。塩分が気になるが、実に旨そうに食べるのだ。

その顔を見て、私も顔がほころぶ。

「母ちゃん、うまいか?」

歯の無い口で笑い、

「マグロうめえな」

と母がいう。

私に出来る、せめてもの親孝行だ。母ちゃん、また来週もマグロ食べような。

最新情報をチェックしよう!
>プチ紳士・プチ淑女を探せ!運動とは?

プチ紳士・プチ淑女を探せ!運動とは?

ゆっくりでいい。一歩ずつでいい。
自分のできる範囲でいいから、
周りのことを思いやる世の中を作ろう。