『2つのカレー』|親孝行大賞受賞作品

岐阜県加納東丸町
おべんとう様の作品

サンタさんに手紙を書いて、自分用の包丁を頼んでいた5歳の娘。サンリオキャラクターのついた、可愛らしい安全包丁が枕元に置かれていた。2005年のクリスマスのことである。

しばらくの間、おままごとに使われていた。その愛らしい姿を、微笑ましく眺めていた。すごく気に入ったようで安心していた。

その頃、母の日が近くなるとテレビから「母の日はカレー」という宣伝文句が気になるようになった。なるほど、父親と作るにはちょうどよい。母親も少しは楽ができる。

しかし…この宣伝文句に、どうか気が付かないで…と、私はずっと願っていた。何故なら、その日のお昼ご飯は、ずっと前から母とCoCo壱番屋のカレーと決まっていたからだ。

私が大学生の頃からの習慣で、母が願ったものだ。就職をして、私に少しはゆとりができても、結婚をしても変わらなかった。はじめは、私の懐具合を気にしての提案だったであろう。

しかし、今は毎年、変わらないことを楽しみにしていたのだと思う。その証拠に、就職と同時に付け合せが豪華になり、注文にも遠慮がなくなっていったからである。

この日ばかりは、父は遠慮してくれた。二人で過ごす大切な時間であった。カレーは大好きである。しかし、お昼と夜…二回続けるのは…避けたい。

だからテレビよ、余計なことを言わないで…しかり、2006年の母の日。恐れていたことがおきた。晩御飯に用意されていたものはカレーであった。不揃いの人参、甘すぎるカレールゥどれも、私の好みではなく、主人と娘の大好物である。得意げに、自前の包丁を持った娘が微笑んでいた!

私はサラッとしたカレーが好きなのである。母譲りである。しかし…幸せなのである。美味しくないけど、嬉しいのである。素直に気持ちを伝えると、毎年、母の日には、少しずつレベルアップしたカレーが用意されるようになり、今年、二十歳を迎える娘は一人で、しかも、私好みのカレーを作るまでに成長した。

では、私の母との時間は?

まだ、続いているのである。少しずつ食が細くなってきた母。あれ程遠慮なく頼んでいた付け合せも減ってきた。毎年同じものを食べているから分かること。寂しくもあるが、また来年来られますようにと、当たり前に迎えるこの日を、一層幸せに思えるようになった。

親孝行をして、親孝行をされる日。2つの孝行が重なる日、私は2週間前からカレーを断つのである。

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