『遺伝』|親孝行大賞受賞作品

大阪府大阪市
淀川太郎様の作品

僕の父は昔から単身赴任でいつも家にいなかった。

昔からそれが当たり前だったためとくに寂しいと感じたことはなかったが、たまに帰ってきたときに一緒に古本屋に行くのを楽しみにしていた。

僕は漫画コーナーへ父は難しい活字ばかりの本が並ぶコーナーへ、時間がたつとそれぞれが本を持ってきて、父に本を買ってもらうのだ。

僕は思春期になり父と話すこともなくなった。父は一人で古本屋に行くことが多くなっていた。父が単身赴任に行っている間に父の部屋に行くと昔よりずいぶんと本が増えていた、何冊か僕でも読める本が増えていた。

大学生になるタイミングで僕は一人暮らしのために実家を離れた。一人暮らしになってから本を読むことが増え、一人で近くの古本屋によく行くようになった。

昔とは違う父がよくみていたコーナーの方へ何冊か本を買い、家で読む。

久しぶりに実家に帰った。父の部屋に入ると何冊か見覚えのある本たちが棚には並んでいた。僕の部屋にも同じ本が並んでいる。やっぱり僕は父の子供なんだと感じた。

父とはいまでもあまり話さない。

僕はいま小説家を目指している。単身赴任で遠くにいる父が、仕事終わりに古本屋によるのだ。父がいつものコーナーで新しい本を探す。そこに見覚えのある名前を見つけるのだ。

離れているまま、思春期のまま、話すこともなくなった僕たち親子だが、本を通してなら伝えられる気がする。いつか父の部屋の本棚に僕の本が並んだら、本の感想を聞いてみよう。

そして、一緒に古本屋に行こう。それがきっと僕たち親子にはふさわしいと思うから。

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