【ペンネーム】メラニンさん
【性別】女性
【年齢】20代
【住所】埼玉県さいたま市
【「親孝行大賞」のタイトル】
孝行娘
【「親孝行大賞」の本文】
わたしの母は、姉とわたしを出産してからというもの長い間専業主婦でしたが、わたしが小学校高学年になるタイミングでパートを始めました。
それは、隣の市にある父の実家の書店「武南堂」の手伝いです。3年前に祖父母が店を畳んでしまいましたが、母はそこで義理の両親と約10年仕事をしていたことになります。
母は週に5日、朝から夕方まで店番や本の配達、在庫の整理などのパートをこなしていました。
わたしは、祖父母の書店というだけあって、長期休暇の際はよく母についていっては、仕事中の母や祖父母をよそに、漫画や雑誌を読んだり、買ってもらった駄菓子を食べたりしてとても楽しい時間を過ごした記憶があります。
また、祖父母がたまに遊びにくるわたしを「孫なのよ」とお客さんに自慢げに話すのも好きでした。
母がなぜわざわざ父の実家でパートをすることになったのか、詳しくはわかりません。単に店の人手が欲しかったとか、子育て中で柔軟に働ける場が欲しかったとかそういう理由なのではないかと思います。
しかし、3人は本当に和気藹々と働いていて、今となってはうちの母すごいなと思います。よくお客さんが母を「本当の娘さんなんでしょ?」と間違えるほどでした。
祖父母が書店を辞めてから母は違うパート先に落ち着きましたが、未だに空いた時間を見つけては、かつて書店だった祖父母の家に何かと理由をつけて遊びに行きます。
「近所から野菜をたくさんもらった」「美味しい新米が届いた」などと言って、わたしや姉や父を連れて行きます。
しかし、数年前から祖母が持病の悪化で透析をしていることもあり、祖父が慣れないながらも家事を担当しているので、それを手伝い、様子を見に行くのが母の本当の目的だとわたしは知っています。
先日も母が張り切って栗ご飯を作り、実家に持っていくと言ったのでわたしもついて行きました。母と遊びに行くと毎度祖父母は喜んでくれ、せっせと家の美味しいお菓子や飲み物を出してくれます。
「嫁姑問題とか言うけど、ママは本当におじいちゃんおばあちゃんと仲良いよね」
と帰りにこっそり聞くと、
「一緒に本屋やってる時に可愛がってもらったからねー。実際自分の両親より一緒にいた時間長かったと思うわー」
と母。
コロナ禍にあっても玄関先に荷物を置きにいったり、顔だけ見にいったりと、本当に良い娘(嫁)だなと、我が母ながら思います。
一方で、母は自分の両親にも孝行を欠かしません。祖父は昨年亡くなりましたが、リビングに写真を飾って時々何か話しかけています。
一人になった祖母には、週に一度は必ず電話をかけています。母は自分の背中をもって、わたしもかくようにありたいと思わせてくれます。