二宮清純さんの講演を聴く機会に恵まれました。演題は「2020年東京オリンピック・パラリンピックをどう迎えるか」です。「これは、タイムリーな話題だなぁ」と、興味津々で出掛けました。
二宮さんは、日本のスポーツジャーナリストの第一人者です。トップアスリートたちの逸話が、次々に披露されグイグイと引き込まれました。さて、話も後半。二宮さんは、こんなことを言われました。
「今度の大会で注目すべきは、間違いなくパラリンピックだと思っています」
と。そして、聞きなれないアスリートの名前を出されました。河合純一さんです。知らないのは私だけなのかもしれません。全盲の水泳選手。ネットで調べたプロフィールを紹介させていただきますね。
1975年、静岡県浜松市生まれ。 パラリンピックには、全盲のスイマーとして1992年バルセロナ、1996年アトランタ、2000年シドニー、2004年アテネ、2008年北京、2012年ロンドンに出場。 金メダル5個を含む21個のメダルを獲得している。日本障がい者スポーツ協会日本パラリンピック委員会委員長。日本パラリンピアンズ協会会長。スポーツ庁 オリンピック・パラリンピック教育に関する有識者会議委員。
すごい方です。パラリンピックのレジェンドと言われているそうです。存じ上げなくて恥ずかしい・・・。
さて、かなり昔の話。二宮さんが、河合さんに初めて会った時、第一声、河合さんにこう言われたというのです。
「私はあなたの先輩です」
と・・・。二宮さんは「えっ!?」と戸惑いました。河合さんは1975年生まれ。二宮さんより15も年下です。キョトンとしていると、こんな話を始めたられたそうです。
「二宮さんは、今朝、新聞を読んで来られましたか? その新聞、いつ読めなくなるかわからないんですよ。この先あなたも、いつ白内障や緑内障になるかわからない。加齢黄斑変性になって、目が見えなくなるなるかもしれないんです。そしてそれは、明日かもしれません。だからね、私たち障がい者は、あなたの先輩なのです」
二宮さんは、ハッとして「まったくその通りだ」と思ったそうです。障がいとは、日常生活を送っていると、ついつい他人事だと思ってしまいます。でも年を取ると誰もが目だけでなく、耳も衰えてきます。歩けなくなる日が来るのです。障がいの問題は、他人事ではない。自分の問題でもあるのです。だから、障がい者は、健常者の先輩と言えるのです。
前回の東京オリンピックは、高度経済成長の坂道を上る最中に開催されました。ところが、今の日本は下り坂です。人口は減少に転じ、3人に1人が高齢者。オリンピック・パラリンピックの位置づけも、自ずと変わるというのです。
間違いなく、誰もが老いを迎えます。すると、誰もが、身体に不自由なところを抱えるようになります。そんな中、不自由にも関わらず、精いっぱい記録に向かって挑むアスリートの姿を見ることは、他人事ではないのです。それは、自分の未来の姿。
さらに、さらに・・・。ハンディを負った人を、他人事ではなく未来の、いや、ひょっとしたら明日の自分自身かもしれないと思えたら、間違いなく他人に対しての「思いやり」の心が心に芽生えるはずです。
ということは・・・。「思いやりでいっぱいの世の中にしよう」という、「プチ紳士・プチ淑女を探せ!」運動は、パラリンピックとたいへん近い位置にあるのではないかと思えてきました。
ぜひ、パラリンピックに注目して、東京オリンピック・パラリンピックを迎えたいと思います。