『一人になる時間も大切』中野敏治|ちょっといい話 志賀内泰弘

今日は、神奈川県の元・中学校校長で、やまびこ会(全国教育交流会)代表の中野敏治さんのお話を紹介させていただきます。

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「一人になる時間も大切」中野敏治

●園児の大きな成長を予感

幼稚園の公開保育へ参加しました。登園の様子から降園までの園児の一日の生活を見させていただきました。園児の登園の様子はさまざまでした。

元気に「おはよ!」と先生に挨拶をして、自分の教室に走っていく子。

園庭で飛べるようになった縄跳びをおかあさんに見せている子。

泣きながらおかあさんにおぶされ、登園してくる子。

園についても、おかあさんの背中にしがみついたまま降りようとしない子。

おかあさんが帰るときになって急に寂しい顔になってしまう子。

その様子をじっと見ていた私に「登園の子どもたちの様子は、毎日ちがうんですよ。この様子が三学期に向けてまた変わっていきますよ。子どもの成長は本当に早いですからね」と園長先生が教えてくれました。

●子どもは遊びの天才だ!

園児は園舎に入り、先生の話を聞いた後、園庭や園舎で活動を始めました。固形石鹸に水をつけながら、手の中で泡立てていると思ったら、今度は固形石鹸を大根おろし機で粉にするのです。固形石鹸を粉石鹸にしてコップに入れて泡立てるのです。そのコップの中で泡立った石鹸をもって、私のところに走り寄ってきました。

「ねぇ、これソフトクリームだよ」と渡してくれました。

近くにいた園児のソフトクリーム(泡だった石鹸)は色がついていました。

「これはオレンジのソフトクリームだよ。おいしいよ」と差し出してくれました。色のついた折り紙を水で溶かし、その色水で粉にした石鹸を溶かしたようです。

「子供は遊びの天才」という言葉がぴったりするほど、遊びを発展させていきます。

●ひとりぼっち?それとも・・・

みんな元気に遊んでいる園庭で、一人砂場にいる子がいました。小さなスコップで砂をすくい、その砂をふるいにかけて細かな砂を作り、コップに集めているのです。

「みんなと遊ぼう!」と私が声をかけようとすると、園長先生が「園児は一人になる時間も成長の時なのですよ」と声をかけてくれました。

園長先生の言葉を聞いてもその子が気になって、そっと遠くから見ていました。しばらくすると、その園児はふと立ち上がって、石鹸ソフトクリームのところへ行き、何事もなかったように、みんなと元気に大きな声で笑いながら遊び始めました。

子どもの世界は不思議な世界です。

●そっと花束を

園児たちの帰る時間が近づいてきました。廊下を歩いていた私の後ろから、そっと近づき、私の手を握った園児がいました。

驚いて振り向くと、手をぎゅっと強く握りなおし、一生懸命に折った折り紙の花束を私に差し出したのです。

あまりにも突然なことで驚きました。その園児は砂場で一人遊んでいた子でした。

(子は宝です)

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