『お茶を差し上げないほうがよい場合もある』|ちょっといい話 志賀内泰弘

私は胃腸が弱いので、真夏でも冷たいものは飲みません。

さすがに熱中症になりそうなときには、一口、二口だけ冷たいものを口にしてから、その後は常温の飲み物に切り替えます。昔は、ビールをグイグイとやっていたので、正直つらい。

でも、身体のためには仕方がありません。仕事先の会社を訪問すると、夏は必ずと言っていいほど冷たいお茶が出てきます。

口をつけないでいると、
「どうぞ、召し上がってください」
と言われるので、飲む真似だけをします。

さて、30年来の友人・中村由美さんが新刊を出しました。

「仕事に差がつく気配りの教科書」(モラロジー道徳教育財団)です。
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中村さんは、カレーハウスCoCo壱番屋の創業者・宗次徳二さん、妻の直美さん、社長の浜島俊哉さんの三代にわたって秘書を務められました。その実績から、日本秘書協会が選出する「ベストセレクタリー」を受賞し、「日本一の秘書」になりました。

その著書の中にも、こんなことが書かれていました。

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あなたはお茶出しのとき、どのような気配りをしていますか? “いつも通り、こうしておけばいい”という決まりきった応対をしてはいないでしょうか?

以前、営業回りをしている男性が、「夏はどこへ行っても冷たい飲み物が出るのはありがたいけど、残すのは申し訳ないと思って飲み続けると、お腹を壊してしまうんです。時には温かいものが飲みたいかな」と教えてくれました。

私は、「そうか!」と膝を打ちました。

それ以来、お客様によっては「今日はずっと挨拶回りですか? お茶は冷たいものでも温かいものでもご用意できますが、どうされますか?」とお尋ねするようにしています。

型にはまった応対であれば、夏に温かいお茶を用意することはありませんね。ですが、相手に興味を持って意向を尋ねて出す温かなお茶は、立派な気配りです。

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おお、やっぱり。私と同じようなことを思っている人がいるんだ。

なんだか、ホッとするとともに、これこそが相手に対する「思いやり」なのだと思いました。中村さんは、さらにこう続けます。

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さらにプラスワンの気配りとして、お茶を差し上げないほうがよい場合もあることを心得ておきましょう。

例えば、年末年始や就任の挨拶回りでいらっしゃったお客様は、挨拶を済ませたら、すぐに次の訪問先へ向かいたいはずです。

それなのに、いらっしゃってからお茶の準備を始めていては間に合いません。先方も、お茶を出されたら飲まずに帰るわけにはいきませんから、申し訳なさそうに、一口だけ口をつけてお帰りになります。

そうならないように、事前に担当者と情報を共有しておいて、到着されたらすぐにお茶を出さないほうがありがたいと思われることもあるのです。

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中村さんは、宗次さんによく言われたそうです。

「お客様は百人いれば百通りの接客がある。こうしておけばいいなんてことは一つもない。それぞれのお客様をよく見て声をかけることが大事だよ」
と。

しばしば、宗次さんの事務所を訪ねます。すると、中村さんに訊かれます。

「志賀内さんは温かいお飲み物の方がよろしかったですよね」

いつも、暖かいお茶を所望します。

それをわかっていても、「ひょっとしたら、今日はめちゃくちゃ暑い日だから、冷たいものものを欲されるかもしれない」と、わざわざ確認してくださるのです。

中村さんは、著書の中で、こう結ばれています。

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お茶出しに限らず、気配りに「こうしておけばいい」という思い込みは禁物です。時には、「これでいいかな」と変化球を投げかけてみましょう」

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「仕事に差がつく気配りの教科書」(モラロジー道徳教育財団)より抜粋
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