『日本一の秘書が教える気配りの術』|ちょっといい話 志賀内泰弘

祇園を舞台に小説を書いています。「京都祇園もも吉庵のあまから帖」シリーズ(PHP文藝文庫)です。

祇園の元お茶屋さんだった甘味処が舞台なので、足しげく毎週のように京都訪れ、舞妓さん、芸妓さんのしきたりや日常を学ぶため、お座敷遊びもしなくてはなりません。 (小説を書くにも、懐がかなり痛みます)

ある時、初めてお座敷に来ていただいた舞妓さんに名刺を差し出すると、
こう言われました。

「まあ、作家さん! どんな御本を書いておられれるんどすか?」

私は、別途、作ってある著作一覧の名刺をもう一枚渡しました。すると、

「あっ、この本面白そうどすなぁ」
「はい、僕の本の中では一番評判がいいです」
  
ここまでは普通の会話です。というより、「いつも」のことで、相手も初対面の私との会話を盛り上げるために言ってくれているのだとわかっています。

ところが、その舞妓さんは、続けてこう言いました。

「必ず買って読ませてていただきます」

「買います」とか「読みます」と言われることは多いのですが、こんなことを言われたのは初めでした。そうです。「必ず」なんです。「かならず」という、たった4つの「音」であるにもかかわらず、心にドーンッと響きました。

そんなことを言われたことは、一度もありませんでした。

もちろん、舞妓さんの社交辞令に違いありません。でも、正直に嬉しかったのです。

さて、30年来の友人・中村由美さんが新刊を出しました。
「仕事に差がつく気配りの教科書」(モラロジー道徳教育財団)です。
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中村さんは、カレーハウスCoCo壱番屋の創業者・宗次徳二さん、妻の直美さん、社長の浜島俊哉さんの三代にわたって秘書を務められました。

その実績から、日本秘書協会が選出する「ベストセレクタリー」を受賞し、「日本一の秘書」になりました。その中村さんが、新刊の中で、「相手に届く気配り術」とはどんなことか、このように書いておられます。

    *    *    *    *    *

相手を気づかうさりげない言葉には、例えば、次のようなものがあります。

「今日は『わざわざ』ありがとうございました。『お気をつけて』お帰りください」

「『すぐに』お呼びいたしますね。今日は日差しが強いので『涼しい』日陰でお待ちください」
「急に降ってまいりました。『よろしければ』傘をお持ちください。『ご返却は無用ですから』」

さりげない会話ですから気づかれにくいのですが、気配りの上手な人は、目に見えるサービスだけにとどまらず、自身のひと言、ひとつの行動を通して「あなた(相手)のことを大切に思っています」という気持ちを、自然体で相手に伝えているものです。

そのためには、周りに目を向け、相手をよく見て変化に気づき、してほしいであろうことを察することです。

(一部抜粋)

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「わざわざ」という「4音」、「すぐに」という「3音」がプラスされるだけで、ものすごく気持ちが心に届きます。

「早く仕事を終わらせたい」
とか、
「忙しい時に急に来客で困ったなあ」
などと思っていると、なかなか言葉に出て来ないものです。

でも、ほんのささいなことが、相手の心には大きく響くのですね。

それにはどうしたらいいのか。
中村さんは、こうおっしゃっています。

「難しく考える前に、まずは相手に目線を合わせて、柔らかな表情で『いつもありがとうございます!』と言ってみましょう。言ったほうも言われたほうも、穏やかな表情になるはずです」

わずか3か4音に、仕事や人生が上手く秘訣があることに改めて気づかされました。

★中村由美さんの新刊★
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