『時を待つ心』|ちょっといい話 志賀内泰弘

私はとにかく、せっかちです。スーパーで買い物をする際、どのレジが空いていて速そうか、瞬時に観察して並びます。

もし、いったんは並んだものの、隣のレジの方が進むスピードが速かったりすると、悔しくて悔しくて地団駄を踏みます。

そんな性格は、仕事にも関わってきます。例えば小説を書く時、どうしてもアイデアが浮かばない時があります。もう悶えて悶えて、のたうち回ります。

それよりも前に、原稿の依頼がパタンッと途絶えることがあります。つまり、仕事がない時です。

松下幸之助翁が、こんなことを言っておられます。

「悪い時がすぎれば、よい時は必ず来る。おしなべて、事を成す人は、必ず時の来るのを待つ。あせらずあわてず、静かに時の来るのを待つ」

歳を重ねて来ると、
「まあ、暇なときもあるよな」
「たまたま、だろう」
と、少しは鷹揚に構えるようになります。

でも、若い頃は、そんなことがわかりませんでした。前に進むことしかしない。暇は敵だと思っていた。じっとしているのは、サボッていることと同じと思っていた。とにかく、「待つ」なんてことは、罪悪でした。

60歳で、小説家デヒューをしました。おかげさまで、「京都祇園もも吉庵のあまから帖」シリーズは好評で、5巻まで重ねることができています。書けば書くほど、苦しくなります。1巻より3巻、3巻より5巻を書いた時、アイデアを出すのに苦しみました。

そんな時、「待つ」というのが多いに役立ちます。悶えて悶えて、ひねり出そうとしても、アイデアが出ない時は出ないのです。ここで、心が折れないようにするのが肝心。松下幸之助翁の言葉が、生きてきます。

「よい時は必ず来る」
「静かに時の来るのを待つ」

とは言っても、もしアイデアが出て来なかったらどうしよう。日々、そんな恐怖との戦いです。

もちろん、ベストを尽くすのは当然です。でも、人生の中で、ベストを尽くしても、どうにも解決しないことがあります。
そんな時、
「時を待つ心が役に立ちます。待つのは不安です。では、どうしたらいいのか。自分を信じること。ベストを尽くしているんだから、大丈夫だ」と、好機が来るのを待つことに尽きるのです。

とはいうものの・・・次の締め切りを控えて、悶々とする毎日です。

(参考)松下幸之助著「大切なこと」(PHP研究所)

最新情報をチェックしよう!
>プチ紳士・プチ淑女を探せ!運動とは?

プチ紳士・プチ淑女を探せ!運動とは?

ゆっくりでいい。一歩ずつでいい。
自分のできる範囲でいいから、
周りのことを思いやる世の中を作ろう

CTR IMG