大津たまみさんという友人がいます。株式会社アクションパワーなど四社を創業し、掃除や片付け、人材育成のセミナーなどを行っています。
マスメディアにもひんぱんに出演し、NHKの「あさイチ」では常連です。その大津さんと知り合ったのは、もう16、7年も前のことです。
その後、ときどき情報交換をしたり、パーティや講演会でばったり会うことがありました。
さて、2年くらい前のことです。たまたま、大津さんを交えて友達4人でお茶をしていた時のことでした。突然、大津さんがこんなことを言い出すのです。
「私は、15年くらい前に参加した志賀内さんのセミナーで人生が変わりました」
というのです。
「え?・・・なんのこと?」
尋ねると、こんなことを話してくれました。
私は15年ほど前、数回にわたって、「出版セミナー」を開催したことがあります。本を書いて出版したい人が多く、個別に何人もの相談を受けていました。
そう簡単に「どうしたら本が出せるか」なんて説明できません。一人に、最低でも2、3時間はレクチャーし、さらにその後のフォローまでしていました。原稿の書き方から指導したこともあります。もちろん、無料です。
こちらが、メチャクチャに力を入れて説明したのにもかかわらず、実行に移さず、それ以降、連絡さえない人が何人もいました。そうなると、ドッと疲れが出ます。
そこで、「出版セミナー」を開催して、一度に大勢の人に説明することにしたのです。そして、有料にしました。それも、「ちょっとがめついんじゃないの?」と言われても仕方がないくらい高額に設定しました。
なぜなら、冷やかしの参加者は御免だったからです。
ちゃんと聞いてくれて、すぐに実行に移してもらえるなら、本気で無料でかまわないと思っていました。でも、タダとなると、大勢が押し寄せることが予想できます。さらに、場の空気が整わなくなる恐れがあるのです。
それでも、毎回、10人以上の人が参加してくれました。
さて、話を戻しましょう。その出版セミナーに、大津さんが参加していたというのです。申し訳ないのですが、私に大津さんの記憶がありませんでした。そのセミナーで、私は、こんなことを言っていた・・・らしいのです。
「1冊出せばいいと思わないでください。10冊書くことを目標にしてください」
う~ん、話したような、話さないような。しかし、それは大切なことなのです。本に限りません。仕事も同じです。
「ここまで」と思って目標を決めて、どんなに努力したとしても、よほど頑張らないと目標にはたどり着けません。5冊、本を出そうと心に強く決めて、1冊出せたらいいところです。
だから、10冊出すというくらいの大きな目標を最初から立てることは必要なのです。もちろん、一気にというわけではなく、ポイントポイントの細かな目標設定は必要になります。
大津さんは、それから10年ほどをかけて、なんと10冊の本を出版してしまったのでした。こんなに嬉しいことはありません。こんなに講師冥利に尽きることはありません。大津さんには言ってませんが、心の中でバンザイ!をしたほどでした。
今はもう講演や研修活動はしていませんが、今までに大勢の人の前でお話させていただきました。参加者全員に、幸せな人生を送ってもらいたいと願って、熱を込めて話してきました。
その後、それぞれが掲げた夢を実現できた人に共通すること。それは「実行力」に他なりません。
考えたら動く。
なんだかんだと言う前に、すぐ動く。
転んだら起き上がる。
失敗したら反省して、やり直す。
愚痴を言うより、行動する。
評論家かにも批評家にもならない。
実践者、行動家である。
ただ、それだけのことで、人生が大きく変わった人たちを何人も見て来ました。
さてさて、その大津さんのことです。驚くべきことに、私の「出版セミナー」を聞いて下さった頃、シングルマザーとして貧困のどん底にいたのです。
それなのに、無理をして参加費を工面して下さったことに、今さらながら申し訳ない気持ちでいっぱいです。ここにも、「実践者」の「覚悟」が見受けられます。
そんな大津たまみさんのことを、数年前に月刊紙「プチ紳士からの手紙」の書かせていただきました。その朗読を、ここで聴くことができます。
▼YouTube配信
第5回 日よう深夜のいい話のラジオ
シングルマザー・大津たまみさんの「夢」への挑戦|2022.03.13
「日よう深夜のいい話のラジオ」は、「プチ紳士・プチ淑女を探せ!」運動事務局の小島章裕局長が、毎週日曜日に配信しているネットラジオ番組です。
まだ始まったばかりですが、おかげさまで「小島さんの声を聴いていると、それだけで癒される」と好評です。
続けて、お聴きいただけたら幸いです。
志賀内泰弘