ちょっといい話『秘密の合図』志賀内泰弘

今日は、岐阜聖徳学園大学・玉置ゼミ7期生 下野綾巳さんから届いた心温まるお話を紹介しましょう。

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「秘密の合図」

アルバイト先での話です。私は、カフェでアルバイトをしています。もう4年目になりました。

何年も働いていると、このお客様はいつもアイスコーヒーをご注文されるな、あのお客様はいつもモーニングセットに氷少なめのアイスティーだな、とお客様のお好みに合わせたメニューを覚えていくものです。

ある年の季節の変わり目、ちょうど今の時期です。肌寒い日に、いつもアイスコーヒーをご注文されるお客様に一言

「今日は少し肌寒いですので、宜しければホットコーヒーはいかがですか?」

とオススメさせて頂きました。お客様の顔がパアっと明るくなって、

「君は気が効くね。少し寒いなと思ってたんだよ。今日からホットコーヒーにしよう。ありがとう」

と。それからは、春や秋といった季節の変わり目には、ニコッと私にアイコンタクトをされ、

「今日から、(春であれば)アイスコーヒーにするよ。(秋であれば)ホットコーヒーにするよ」

の合図を送ってくださるようになりました。お客様との秘密の合図です。

季節が流れたある冬の日。秘密の合図をし合うお客様がいつもの時間にいつも通りお店にご来店されました。しかし、少し神妙な面持ち。どうしたのだろうと多少の不安を抱えながら、いつも通りコーヒーを淹れていると、

「実は、転勤することになったんだよ。今までありがとう。君のおかげで朝から美味しいコーヒーが飲めたよ。
春先になるとアイスコーヒーが出てきて、秋口になるとホットコーヒーが出てくる。
何も伝えてないのにね。とっても安心する空間だったよ。本当にありがとうね」

 私は大きな声で、

「えっ!」

と驚いてしまいました。特別、価格を値引きした訳でもなく何かサービスをした訳でもありません。それなのに、
「ありがとう」と言っていただける。

そして、わざわざ転勤のことをお教えくださる。出会いもあれば別れもある。思えば、私は、その方からいつも帰りに「ありがとう」とお伝え頂いていました。沢山の「ありがとう」を頂いていたことを最後になって思い出したのです。

お客様は最後に、

 「ありがとう。これからもその元気と笑顔でね。きっとここにいる常連さんは、いつも君に助けられてる」

とおっしゃられ、お帰りになられました。

胸が熱くなりました。私は、この出来事を今も胸に働いています。

今では、ご注文の際私の顔を見ればいつものねと言わんばかりにチラッと目配せしてくださるお客様が沢山いらっしゃいます。

沢山のお客様との合図が増えていくたびに、私はいつもあの方の「ありがとう」を思い出して、笑顔になるのです。

そして、今日もまた秘密の合図と共に笑顔で元気いっぱいでコーヒーを注いでいます。

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