滋賀県で高校教諭をしている北村遥明さんは、毎月ゲスト講師を招いての勉強会「虹天塾近江」を主催し、その講演録などを掲載したニュースレターを発行しています。
その北村さんから、当メルマガの読者のみなさんに、こんなメッセージをいただきました。
読後、なんだか心が軽くなりました。
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「自分の本性を大切にする」
北村遥明
私はこれまで、人生の価値や喜びというものは「他人を喜ばせることができれば、できるほど、より豊かで大きなものになる」と思ってきました。
ですから、教師という仕事をしていて、生徒に何かを語る時や、学級通信などで発信する時に、「他人を喜ばせる生き方をすることで、自分自身も幸せな人生を送ることができるんやで」 というメッセージを暗に込めて伝えてきたように思います。
しかし、あるときクラスの女生徒がこう話してくれました。
「人のために… と言われると苦しくなるんです。私って、どうしても他人のことにばかりに気を遣いすぎて、全く人生を楽しめていなかったような気がして…」
さて、皆さんならどんな言葉を彼女にかけてあげられますか。
私がこの時言ったのは、
「でも、他人を喜ばせることこそ人生を豊かに、幸せにしてくれるのだと思うよ。今のままで素晴らしいやん」
という言葉。お察しの通り、私の話に彼女は納得することはありませんでした。
さて、私はこのことが気になっていたのですが、いつしか忘れてしまっていました。
ところがある日、ご縁をいただいているお寺の住職と話しているときにふと思い出して、「こんなことがあったんですよ」と話してみました。
すると、こんなことを言われました。
「人は生まれながらに〝何を楽しいか〟と感じるセンサーが違って生まれてきます。これをその人の持って生まれた本性と言います。
でも、この本性はみんな同じというわけではありません。ですから、世の中には、人のために行動を起こすことで〝楽しさ〟を一番感じる人もいるし、逆に、何か自分を喜ばせる行動をすることで〝楽しさ〟を最も感じる人もいます。また、その中間の人もいるわけです。
世の中には、これらの人たちが大体三分の一ずついると考えてみてください。 ここでもっとも大切なのは、他人と比較することなく自分が本性からワクワク楽しい気持ちになれるかということです。
近年、災害が多く、ボランティアに駆けつけた方も多くおられましたが、彼らは人のために行動することで自らも〝楽しさ〟を感じる人たちであり、逆に言うと、そうしないと不快に感じてしまう人たちなのです。
一方、ボランティアに行かなかった人は、他人を喜ばせるよりも、自分の場所に残り、自分を磨いたり自分の仕事に集中したりすることで、〝楽しさ〟を感じる本性があるのです。
それぞれに与えられたもともとの本性を大切にすること。これが一番大切なのです」
私は、この話を聞いて、全員がマザーテレサにならなくていいんだ、と思いました。
周囲の人は社会に役立つ何かを継続して取り組んでいてすごいのに、自分は全然できなくて駄目だと思わされている自分。
人のため、社会のために役立つ活動をしているけれども、「正直義務感でやっていて、ちょっとしんどい…」という気持ちを抱いてしまう自分。
そんな自分に出会った時、こんな風に自身に語りかけてみては、いかがでしょうか。
「それぞれの本性が違うのだから、人と比較する必要なし!自分の心に正直に生きることが一番!人のためになるとかならないとかは二の次。まずは、〝ワクワク〟や〝楽しい〟と心の奥から湧いてくる気持ちを大切にすることが最も大事。楽しく、機嫌よく過ごしている人は、それだけで周囲の人を幸せにできるはずだから!」
もちろん、周囲に迷惑をかけるようなことでは困りますが、こんな風に考えられたら、自分も相手も丸ごと受け入れ、誰かと比べるような生き方を超えていけるのではないかなあと思いました。
もしあの時の女生徒に、こんな話をしていたらどんな反応を示してくれたかなと思い返します。