一般社団法人「言の葉協会」では、全国の小・中学校。高等学校から毎年のテーマに合わせた大切な人への思いや強く感じた気持ちを自分の言葉で綴る作品を募集し、その優秀作品を「言の葉大賞」として顕彰しています。
「プチ紳士・プチ淑女を探せ!」運動事務局が主催している「たった一言で」コンテストと、大いに趣旨が重なります。今日は、第8回言の葉大賞の入選作品から、紹介させていただきます。
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「神様からもらった手」松永 彩伽さん
私が母のお腹の中で育って四ヵ月くらいたった頃、母は病院の先生から私の体には少し病気があることを知らされました。その病気は腹壁破裂というもので、日本で二万人に一人の確率で起こる病気でした。お腹の薄い所に小さな穴があき、その穴から腸が出た状態で母の羊水の中をプカプカ浮いていました。産まない選択もあったようですが、母は迷うことなく、私を産むことにしました。
予定より少し早い四月二十五日、母のお腹を大きく開いて私は取り上げあげられました。それと同時に小児科のスタッフが私を手術室に運び、腸を入れる手術が行われたそうです。小さい身体にいきなり全部は入れない事は出来ないらしく、点滴の容器を半分に切ったような入れ物に腸を入れ、点滴の管の様なものから一週間かけてゆっくり私の体に戻されました。
合併症から左手、左足に合指症という病気を持っていました。左手の三本のゆびがくっついていて、人差し指から四本の爪がありませんでした。一才から一年に一本ずつ、切り離す手術を毎年して、三才の時におへそを作り直して手術は終わりました。
四歳の頃に、自分の指がいつ他の人みたいに生えてくるのか、私は母に聞いたそうです。五才くらいになった時、指も爪も生えてこないことを教えてくれました。
「でもね、彩伽の左手は幸せを掴む神様がくれた手なのよ」
と左手を優しく、にぎりしめてくれました。保育園の時、
「何で綾ちゃんの手は、指がないの」
と聞かれ、
「これね、神様からもらった手とたい。かわいいでしょ」
と答えたそうです。今では、無意識のうちに、左手を隠すようになりましたが、いつか、神様からもらった手と誇りに思えるようになりたいです。
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(編集長・志賀内)
月刊紙「プチ紳士からの手紙」に連載中の「心にビタミンいい話」で書いたことがあります。志賀内の弟は、小児まひで大きな障がいをもっています。そのため、母は、「死ぬほど」の苦労をしてきました。
実際に、何度も弟を抱いて病院の最上階から飛び降りて、「死のう」としたけれど死ねなかったそうです。この世の中には、さまざまにハンデを負った人たちがいます。その親は、子どもに対して、とてつもなく大きな「責任」を感じています。
「これね、神様からもらった手とたい。かわいいでしょ」
この一言が、どれほどの生きる勇気を授けてくれたことでしょう。言葉ってスゴイ!言葉って素晴らしい!!