ちょっといい話『第11回言の葉大賞入選作から~少し違えば』志賀内泰弘

一般社団法人「言の葉協会」では、全国の小・中学校、高等学校から毎年のテーマに合わせた大切な人への思いや強く感じた気持ちを自分の言葉で綴る作品を募集し、その優秀作品を「言の葉大賞」として顕彰しています。第11回の募集テーマは、「壁」。
その入選作品から紹介させていただきます。

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「少し違えば」

福岡県立北筑高等学校 2年 大下 稀鈴

私が駅に向かうバスに乗っていたある日のことだった。

一人の女性の老人が大きな荷物をかかえ、私が乗っていたバスに乗り込んだ。女性はバスを見渡し、座る場所がないとわかると、手すりをぎゅっとつかみ、そのままバスは出発した。

私も席がなかったため、立っていた。女性はひたいに汗を浮かべ、きつそうな表情をしていた。その様子を見た一人の男性が席をゆずろうと女性に声をかけた。私が良かった、と胸をなでおろしたその時、女性は男性にこう言った。

「私を老人扱いするの。あなたは座っていなさい」

と。私は驚いた。男性はきっと、女性が老人だからという理由だけでなく、きつそうな表情を見て、勇気を出して声をかけたのだと思う。

私は心の壁を感じた。

多くの人は、優しく、親切な声をかけてもらったとき、それを受け入れるか、受け入れなくても、「ありがとう」の一言は言うだろう。しかしそれが受け入れられず、さらに悲しい気持になるようなことを言われたら、こちらができることはもうない。

しかし、この話には裏がある。実はその男性は足をけがしており、まつばづえを持っていた。

私は、女性は、足をけがしている男性を気づかってそのように言ったのではないかと思った。もしそうだとしたら、互いに思いやり、気づかっていたことになる。

本当は私たちは良い気持になるはずだった。それだけでなく、他にも女性に席をゆずるべきか悩んでいた人がいたかもしれないが、女性の言葉で、席をゆずれなくなってしまっただろう。

この出来事で私は、心の壁だけでなく言葉の壁も感じた。女性の言葉が少し違えば、その後におこることはなにか変わっていたかもしれない。

私たちは他の人と話すときに、心を開き、相手をよく見て、言葉に気をつけることで、良い気持ちになり、壁を感じることもなくなるかもしれない。

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