ほろほろ通信『手元に戻った薬袋』志賀内泰弘<中日新聞掲載2012年11月11日>

「ひと言お礼が言いたくて」と、名古屋市中村区の吉村千恵子さん(45)から便りが届いた。

去る6月21日、吉村さんの79歳になる父親は一人で自転車に乗って病院へ出掛けた。何年か前に脳梗塞と心筋梗塞を患ったため、月に一度の定期検診を受けるためだ。診察を終えると外は土砂降り。仕方なく自転車を置き、バスで帰ることにした。

帰宅するなりハッとした。つい先ほど、病院の隣の薬局でもらった薬袋がないのだ。傘に気を取られて落としてしまったらしい。薬局から自宅までの道のりを思い返すがわからない。慌てて再び病院に戻った。

もう一度、処方箋を書いてもらおうとお願いしたら、保険がかからないので全額負担になってしまうと言われた。なんと6万円。看護師さんが「誰かが拾ってくれたかもしれない」と、薬局に電話をしてくれたが届いていなかった。5、6人の看護師さんがあちこち捜してくれたが見つからず、ぼうぜんとした。

そこへ一本の電話が入った。薬局の人からだった。薬袋を拾って中村区役所に届けて下さった方があったという。それだけでホッとして喜んでいると、さらに薬局の人がわざわざ区役所まで薬を取りに行き、病院まで届けて下さるという。これには感激して涙が出た。翌日、区役所へ行き、拾って下った方のお名前を尋ねたがどなたなのかわからないという。

「ぜひ、お目にかかってお礼を言いたい。増子記念病院と恒川薬局本店、そして区役所のみなさんも、本当にありがとうございました」と父娘でおっしゃった。

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