ほろほろ通信『10個のポケットティッシュ』志賀内泰弘<中日新聞掲載2012年8月26日>

豊田市の佐藤美恵子さん(66)は、心臓に持病がある。7年前に人工弁の手術をした。安静にしていても心拍数が極めて少なくなることがあり、救急車のお世話になることも10回以上。そのため、この3月に病院に近いマンションへ転居した。腰痛もあり引っ越し作業は大変だった。

5月7日、娘さんとご主人の3人で名古屋駅のデパートに出掛けた。買い物の後、ランチを一緒に取った。その際「おや」と思った。少しもおいしいと感じなかったからだ。

帰りの地下鉄鶴舞線で、だんだん気分が悪くなってきた。引っ越し以降の疲れがたまっていたのだろう。ついに我慢できなくなり、ハンカチを取り出す間もなく吐いてしまった。両手で受けようとしたが、それは床一面に広がった。

ご主人がテッシュを取り出して床を拭き始めると、すぐ近くにいた大学生らしき男性がポケットテッシュを取り出して手伝おうとしてくれた。気がとがめて「すみません、結構ですよ」と目で合図。

その時だった。周りの人が次々にテッシュを差し出してくれた。あちらこちらと、10人以上もの人が。ご主人がお礼を言って受け取り、床を拭いた。おかげできれいにすることができた。

車掌さんに報告しお詫びをすると「大丈夫ですか」といたわってくれた。

「周りの方たちは、きっと臭かったと思います。中には、口をゆすいでください、とペットボトルの水を差し出してくれた方もいました。親切にしてくださりありがとうございました」と佐藤さん。赤池駅の手前辺り、午後3時半くらいの出来事。

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