ほろほろ通信『救急車から「ありがとう」』志賀内泰弘

蒲郡市の渡辺三根さん(45)が休日に奥さんとドライブに出掛けたときのこと。

師崎から日間賀島へ渡る始発の船に乗ろうと、朝3時半に家を出た。途中、常滑市内を走っているとき、救急車のサイレンが聞こえた。前か後ろか「どこからだろう」と注意して耳を傾けた。すると後ろから徐々に大きくなるサイレンの音が聞こえてきた。

そのとき、見える範囲では他に車は一台もいなかった。渡辺さんは、路肩に自分の車を寄せて道を譲った。救急車が右側を追い抜いて行く。その瞬間だった。「どうもありがとう」という男の人の声が聞こえた。

「え?」と奥さんと顔を合わせた。
「あれ?今、救急車がありがとうって言わなかった」
「言った。珍しいわね」

今までにも車を運転していて、救急車などに道を譲ることは何度もあった。しかし、「ありがとう」とお礼を言われたのは初めてだった。救急車の隊員からすれば、法律では一般の車に道を譲ってもらうのは当たり前だ。でも、そこをあえて「協力してくれてありがとう」という感謝の気持ちを伝えてくれた救急車の対応に驚いたという。

「個人的にその救急車の方だけが言っているのか、それとも、その消防署管内では誰もがやっているのかはわかりませんが、他では聞いたことがありませんでした。患者さんの応急措置や病院との連絡などで心の余裕はないはず。それなのに当たり前を当たり前と思わずにお礼を言う。これこそが本当のプロの仕事なんだなと思いました」と渡辺さんは感心した。

<中日新聞掲載2012年6月17日>

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