ほろほろ通信『もう少しガンバロー』志賀内泰弘

豊川市の竹澤久美子さん(62)が看護師をしていたとき、人生を変えるような一つの出会いがあった。担当になった入院患者の女性Mさんだ。

後でわかったことだが、入院手続きの際、竹澤さんが床に膝をつき目線を合わせて話し掛けたことに感激してくれたという。それがきっかけで信頼してもらうことができ、退院後もプライベートでのお付き合いが続いた。

その後、竹澤さんは転職。ところがなかなか新しい職場に慣れることができず悩むことに。ふとMさんにつらい気持ちを漏らすと、こんなアドバイスをしてくれた。

「今、渦潮にもまれているかもしれないけれど、いまに遊覧船に乗って渦潮を見られるからね」

その一言で「もう少しガンバロー」と思えるようになったという。よほどつらい人生を送って来られたのか、Mさんは多くを話そうとはしない。戦前、北方領土で暮らしていたらしい。終戦直後、ロシア兵に追われて山奥に潜んでいた。その後、青酸カリを持って内地へ逃げてきたという。

また、一人で両親や親戚の人たちの介護をしてきた経験もあるらしい。竹澤さんが義母の介護で大変な時にも「十分になさってあげなさい。やりきった時は温かいものが残りますよ」と励ましてくれた。

そのMさんは84歳で健在。絵手紙のやりとりの他、ときどき一緒にショウブやコスモスを見に出掛ける仲だという。「つらい目に遭っている友達がいると、渦潮の話をして励まします。勇気づけられたと喜んでくれます。言葉の力って大きいなあと感じます」とおっしゃった。

<中日新聞掲載2012年6月3日>

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