ほろほろ通信『良い友達を持って幸せです』志賀内泰弘

豊橋市の山下雅代さん(60)は、6年前に息子さんを亡くした。28歳だった。以来、十日に一度くらいお墓参りをしている。

4月の初めのこと。お寺の境内に桜の花びらが散っていた。それを両手いっぱいに拾いお墓に向かった。ところが、お墓の水受けを見ると、なみなみと新しい水が注がれて花びらが満面に浮かんでいる。それを見て、山下さんは涙があふれてきた。

息子さんには高校時代の仲の良い二人の友達がいた。卒業後も一緒に旅行に出掛けたり、飲みに行ったりしていた。彼らも、ずっと2、3カ月に一度、お墓参りに来てくれていた。お供えは決まって缶ビールかたばこ。息子さんの好物だった。

「今でも動物園巡りしてるか?」と缶にフェルトペンで書いてある。生前、動物が好きでよく動物園に出掛けていたからだ。また、こんな言葉も。「山ちゃん元気か」「GWは仕事でどこへも行けないけど、山ちゃんはどこか行ってるのか」。まるで、今もどこかで生きている人に話しかけるように。

そして、桜の時期。毎年、お墓に桜の花が供えてある。亡くなる少し前に3人で花見をしたと聞いていた。おそらく、それ以後も一緒に花見をしてくれているに違いない。二人の友達は、ときおりふらりと家を訪ねて来て、仏壇に線香を上げて行く。

母の日には、山下さんに花のプレゼントをしてくれたこともあるという。5月16日が命日で七回忌とのこと。
「本当に良い友達に恵まれて息子は幸せでした。悲しくてたまらない時、どれほど支えられたかわかりません」
と山下さんは涙声でおっしゃった。

<中日新聞掲載2012年5月20日>

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