ほろほろ通信『恩返しのコンサート』志賀内泰弘

瀬戸市の尾山寿子さん(73)には重度身体障害の息子さんがいる。範芳さん(44)だ。ポリオ(小児まひ)で四肢機能障害になった。今も車いすの生活で、寿子さんが介護をしている。

小学校4年までは訪問授業で自宅まで先生が教えに来てくれた。ところが教育制度が変わり5年生から養護学校へ通わなくてはならなくなった。範芳さんを背負い路線バスに乗る。途中、迎えに来ているスクールバスに乗り換える。学校の授業中もそばに付き添う。それに通院も加わる。

そんな苦労を目にして、近所に住む宮田保子さんが声を掛けてくれた。「車で送ってあげますよ」と。宮田さんは自分の仕事のスケジュールを調整して、優先的に助けてくれた。さらに二人分のお弁当までも作ってくれたという。その宮田さんに「いつか恩返しを」と思っていたが、果たせぬまま12年前に72歳で亡くなってしまった。

昨年の暮れのこと。宮田さんのお孫さんでバイオリニストの英恵さんが、留学中のドイツから一時帰国していることを耳にした。寿子さんは「今こそ恩返しのとき」と思い、瀬戸市でコンサートを開催したいと申し出た。とはいうものの、具体的にどうしていいのかわかならい。

すると友人の板津勝さん(67)が二つ返事でプロデュースを引き受けてくれた。名付けて「絆コンサート&アート展」。英恵さんの演奏会と地元の画家や写真家の展覧会とのコラボだ。

1月28日、立ち見になるほどの盛会。板津さんが、恩返しがことの始まりであることを説明すると、会場には温かな空気が漂ったという。

<中日新聞掲載2012年4月29日>

最新情報をチェックしよう!
>プチ紳士・プチ淑女を探せ!運動とは?

プチ紳士・プチ淑女を探せ!運動とは?

ゆっくりでいい。一歩ずつでいい。
自分のできる範囲でいいから、
周りのことを思いやる世の中を作ろう

CTR IMG