ほろほろ通信『優先席での一喜一憂』志賀内泰弘

3年前、豊田市の柴田和子さん(87)が友人から観劇のチケットをもらい、三つ年上のお姉さんと歌舞伎を見に出掛けた帰路の話。その友人へのお土産を手に地下鉄に乗り込むと、優先席には二人の子ども連れの家族が座っていた。

中学生らしきお姉さんが「席を譲ろうか」と同意を求めて父親の方を見た。すると信じられないような大声が返ってきた。「どうせ御園座で遊んできた奴らだ。替わらんでもいい」。御園座の紙袋を見てのことだと思われた。小学生の妹が母親の顔を見上げると「うん」と小さくうなずいた。二人の子はずっと小さくなって座っていた。

もちろん、こんなことは特別だ。別の日、電車でつり革につかまっていると、若い男性が席を譲ってくれた。降りる時「ありがとうございました」と言うと「お気をつけて、どうぞお元気で」と言われ感激してしまった。

またある時の話。電車に乗り込み発車を待っていると、ホームに荷物を手にしたおばあさんが駆けて来るのが見えた。車内は満席。すると、扉の近くに座っていた留学生らしき若者がサッと席を立った。そこへおばあさんが乗り込んで来て座る。若者は何事もなかったかのように窓の外を見いてた。

おばあさんは席を譲られたことを知らない。気付かれない絶妙のタイミング。なんとスマートな行為かと感心した。

柴田さんは「仏教に施しの教えがあります。この年まで世間さまから多くの施しを受けて生きて来ました。私も残り少ない人生を施しの心を忘れずに大切に生きたいと思います」とおっしゃった。

<中日新聞掲載2009年11月1日>

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