ほろほろ通信『手話ダンスが役に立った!』志賀内泰弘

名古屋市守山区の鈴木槻子さん(83)は、手話ダンスのサークルに参加している。手話ダンスとは歌に合わせて、手話で歌詞を伝えながらゆるやかなステップで踊るものだ。高齢になると耳が遠くなる。手話ができると大きな声を出さなくても話ができる。手話ダンスは、楽しみながら手話を身に付けられることに加えて健康にもよい。

鈴木さんたちは福祉施設やボランテイア団体のイベントにも招かれてダンスを披露している。「川の流れのように」「いい日旅立ち」など誰もが知っている曲ばかりなので喜んでもらえるという。

さて、そのイベントの帰りに大曽根から市バスに乗った時の話だ。後部の降り口近くの席に座っているとアナウンスが入った。「出口に立ってみえる方は危ないので後ろに下がってください」。ふと見ると、ドアの前に30代半ばの女性が立っていた。安全のために引かれた黄色い線を越えている。

運転手さんが3度も「下がってください」と言ったのにもかかわらず、その女性は動こうとしなかった。その時、鈴木さんは「もしや…」と思い、近くに寄って手話で話しかけ注意を促した。「やっぱり」。耳が不自由だったのだ。

「私は耳が聞こえないのでわかりませんでした。ありがとうございました」と、手話で返事をされた。

停留所で降りるときにも再び笑顔で「ありがとう」と言われうれしくなった。自分のために続けていた手話ダンスが、人のために役に立ったのだと思うと胸が熱くなった。「これからも楽しみながら人のお役に立ちたいです」とおっしゃった。

<中日新聞掲載2010年6月13日>

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