毎週日曜日、岡崎市の柵木(ませぎ)哲朗さん(59)は市民センターへ資源ごみを持って行く。そこでは、市から委託を受けたシルバー人材センターの人たちが回収作業に携わっている。
ある日、70歳くらいの男性係員から「ペットボトルはつぶして出してほしい」と頼まれた。そのままだと、かさんで袋に入らなくなるからだ。回収の仕事をしてくれている人の気持ちも考えずに出していたことを反省。以来、柵木さんはつぶして持ち込むようになった。
その後ときどき、その男性と話を交わすようになった。
聞けば、仕事で困惑することがあると言う。段ボールをひもで縛って出してくれるように頼んだら「他にもあるだろう。俺にだけ言うな」と怒鳴られたり、蛍光灯を袋から出してくれるように頼むと「それはお前の仕事だ!」と言い、目の前で蛍光灯をたたき割られたり。中には、対象外のごみを前日から放置していく人もいるらしい。
「腹が立ちませんか」と尋ねると、穏やかに「相手にしてませんよ」と言われた。「資源ゴミは自分の娘を嫁に出す気持ちで扱っているんです。嫁ぎ先で迷惑をかけないようにね」とも。
クレーンでトラックに持ち上げる際、荷崩れしないように整頓して袋にいれるなどの工夫をしているそうだ。さらに「反対に良かったと思うことはありますか」と聞くと、こんな答えが返ってきた。
「スーパーなどで顔見知りの人から笑顔であいさつされることです」
柵木さんは「多くの人たちは係員に感謝しているに違いないと思いうれしくなりました」と話す。
<中日新聞掲載2014年11月30日>