ほろほろ通信『2つの万博をつなぐ思い出』志賀内泰弘

愛知県赤十字救急奉仕団というボランティア団体がある。日本赤十字社が行う救命講習の修了者の中から、有志が参加して活動している。その事務局長を務める江南市の仙田八千代さん(45)の話。

仙田さんは小学1年生の時、両親に連れられて大阪の万国博覧会に出掛けた。会場で急にお母さんの体調が悪くなった。おなかに仙田さんの妹がいたのだ。一緒に救急車に乗って病院へ搬送され、ことなきを得た。その後、無事に出産することができたという。

その記憶も理由の一つとなり、看護師の道を選んだ。最初に勤務した中村日赤病院では、夜勤の日に救急車が来ないことを祈ったものだった。高齢者の施設に勤めていた時には、何度も救急車に乗って病院まで付き添った。

愛・地球博の会場で救急奉仕団として活動した時のことだ。暑い盛りに、遠方から来た高校生が入場待ちの列で鼻血を出した。前日から体調不良のところを無理を押してやって来たという。鼻頭を圧迫して処置をしたがいっこうに出血が止まらない。

そこへ列の中から「耳鼻科の医師です」という人が名乗り出てくれ診てくれた。しかし残念ながらそれでも血は止まらなかった。

救急車を呼んで病院へ運んだ。その時、大阪万博でのことが思い出された。あの時、母親と妹を助けていただいた自分が、今度は手助けをする立場になりうれしかった。感謝の気持ちがつながるような気がして。その高校生から次へとつながって行くといいなぁ、と願っている。

<中日新聞掲載2010年1月10日>

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