『地域の皆さん、ありがとう』|ほろほろ通信 志賀内泰弘

日當(ひなた)郁夫さん(61)は、岩手県野田村の出身。中学卒業後、集団就職で愛知県にやって来た。自動車関連会社に勤めながら定時制高校を卒業し、採用試験に受かって警察官になった。

定年を控えて岡崎署茅原沢駐在所に勤務していたとき、東日本大震災が起き、故郷の村が津波に襲われて半分の家屋が消えた。幸い両親は無事だったが、28人が亡くなった。

発生翌日から、茅原沢地区の人たちが続々と義援金や救援物資などを持って駐在所を訪れた。日當さんが岩手の出身であることを知ってのこと。40年以上たっても変わらないお国なまりのことを聞かれることが多く、岩手の生まれだと答えていたからだ。

建物が全壊した実家近くの保育所には、無事だった園児たちに使ってほしいと、生平小学校の子どもたちが大きなビニールプールを寄付してくれた。

フォークリフト会社の社長は「漁業組合の方たちに使ってもらえたら」とフォークリフトを3台。材木屋さんからヒノキ100本。少ない年金から5万円も差し出してくれたお婆さんも。

才栗作業所の障がい者のみなさんは大量の1円、5円、10円玉の募金を届けてくれた。地域の人たちが被災地を思う気持ちに涙が出たという。

昨年、定年退職で駐在所を離れたが、全員にきちんとお礼が言えなかったことが心残りという日當さん。

「町内会、消防団、商工会、交通安全指導員の会、小中学校、ホタル保存会など数え切れない方々にお世話になりました。野田村を応援してくださり、本当にありがとうございました」

<中日新聞掲載2014年6月8日>

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