『二度あることは三度ある』|ほろほろ通信 志賀内泰弘

岡崎市の三浦敏子さん(68)の長女愛子さんが、就職をしてすぐのころの話。

愛子さんが勤め先の仕事で近くの郵便局へ出掛け、窓口で並んでいると、列の後ろの方から何やら足踏みをしている音が聞こえた。

振り返ると、最後尾の男性が相当急いでいるのか、落ち着かない様子だった。そこで「お先にどうぞ」と順番を替わってあげた。よほどうれしかったのか「どーも」と男性がほほ笑んだ。

別の日の別の時間帯に、また同じ郵便局でその男性とばったり。「この前はありがとう」と言われ「いいえ」と答えた。

二度あることは三度ある。しばらくして、そこからかなり離れた場所を歩いていたら、向こうからあの男性がやってくるのが見えた。今度は少しだけ立ち話をした。連絡を取り合い、お付き合いが始まった。

男性は整備工場を自営する傍ら、バンドでギターを弾いていた。趣味とはいえ本格的で、各地のイベントで演奏している。音楽が得意でなかった愛子さんは一生懸命に歌の練習をして、バックコーラスとしてバンドの一員になった。そして20歳で結婚した。

敏子さんはつい最近、20歳と18歳の二人の孫に両親のなれ初めの話をした。初めて耳にしたらしく「へー」と感心した様子。「お母さんみたいに結婚が早いかもね」と言うと「いい人できるかな」と笑って答えた。

「今の子たちは『縁』と言ってもあまりピンと来ないようです。でも愛子は、小さな親切から縁が生まれて大きな愛を手に入れ、幸せな人生を送っています。孫たちにも縁を大切にしてもらいたいと願っています」と敏子さんは話す。

<中日新聞掲載2014年6月1日>

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