『一日も早い回復を』|ほろほろ通信 志賀内泰弘

西尾市の笹尾正子さん(66)は30年間も同じ美容院「舞」を利用している。同じように長く通っているお客さんたちは、店主のことを「先生」と呼んで慕ってきた。

ところが、先生が5年ほど前にくも膜下出血で倒れてしまった。手術をして職場に復帰されたと思ったらまた入院。現在も病院でリハビリを続けている。

留守を預かっているのが従業員のKさんだ。高校生のときにアルバイトに来て以来、30年も先生を支えてきた。先生が不在なのを承知で、朝早くから大勢のお客さんがやってくる。

4、5人待ちは当たり前。それでも他の店へ行くことはない。笹尾さんもその一人で、なぜなのか考えてみたという。

先生は他人の悪口は絶対に言わない。お客さんの話も他へは漏らさない。だから安心して何でもしゃべれる。

聞き上手で、ついつい愚痴を聞いてもらうことも。年賀状には「これからもいろいろ教えてね」と書かれており、とても謙虚。もちろん弟子のKさんも同様だ。

お店には、販売用のシャンプーやリンスが置いてあるが「これは高いからやめておきなさい。ドラッグストアの方が安いわよ」と損得勘定抜きでお客さんと接してくれる。

以前、保険の仕事をしていたとき、誰も契約してもらえず困っていたら「私でよければ」と二つ返事で加入してくれたことも。

お見舞いに行きたいが、ご主人はいつも「気持ちだけでうれしいです」と。

「きっと他のお客さんも同じような思いで先生のファンになったのでしょう。一日も早い回復を心からお祈りしています」と笹尾さんは話す。

<中日新聞掲載2014年5月18日>

最新情報をチェックしよう!
>プチ紳士・プチ淑女を探せ!運動とは?

プチ紳士・プチ淑女を探せ!運動とは?

ゆっくりでいい。一歩ずつでいい。
自分のできる範囲でいいから、
周りのことを思いやる世の中を作ろう。