2011年2月27日の本欄で、豊田市藤岡中学校長の梅村清春さんから届いた「戸越峠のクリーン大作戦」なる話を紹介した。
藤岡町の戸越峠。深い谷川には2㌔にも及び、不法投棄された産業廃棄物や家庭のごみがあふれ「廃棄物の巣窟」と呼ばれている。
そこで「ぺんぎんむら」という地域の有志が中心になり、藤岡中の生徒も参加して清掃活動をしているという話。ただ、膨大なごみの量のため終わるめどのない戦いだと聞いていた。
梅村さんから再び便りが届いた。
「丸10年目にして奇跡が起きました。昨年の12月7日の一斉清掃で、ついに完了しました」と。
中学生127人を含む約200人が参加。さびついた自転車を手の切れるほど冷たい川の中から掘り起こしたり、砂の詰まったスーツケースを引き上げたり。どろどろになった電子レンジや冷蔵庫、金庫、布団などを人海戦術で谷底からトラックまで運び上げた。
小見門みよ子さん(44)は藤岡中の卒業生。現在は豊橋市に住んでいるが2年前から清掃に参加している。その日も6人の男子生徒や先生と一つのグループになって谷に下りた。
大型トラックのタイヤを引き上げるのが問題だった。タイヤの半分が土に埋もれてしまっている。みんなでドロドロになって掘り出す。靴や服が汚れても誰も気にしない。でも、大きな石が載っていて動かない。
「これはあきらめよう」と口にしたら「もうちょっと、みんなでやればできる!」と男子生徒の声。
「せーの」と力を込めたら石が動いた。何度も何度も繰り返してついに道路まで引き上げた。大きな木が横たわっている急な斜面を迂回(うかい)したり乗り越えたりして。
小見門さんは言う。「生き生きと楽しんで清掃している子どもたちを見て、こちらが感動をもらいました。ありがとうございました」。今回引き上げたごみの総重量は3.7tにも及んだという。
<中日新聞掲載2014年2月16日>