チャイムが鳴って出てみると|ほろほろ通信 志賀内泰弘

小牧中学校の校長玉置崇さん(56)は自家用車で通勤している。

6月のある日のこと。いつものように帰宅すると、いったん家の前で車を止めた。車の通りが激しい県道に面しているので、信号のタイミングを見計らい、バックで車庫に入れるためだ。

ハザードランプをチカチカさせて、信号が赤に変わるのを待つ。車を車庫に入れ、家の中に入ってほっと一息ついていると、チャイムが鳴った。

「誰かな」と思い、窓の隙間からのぞくと25歳ぐらいの男性が立っていた。作業服を着ている。玉置さんの顔をチラッと見るなり「ハザードランプがついてますよ」と大きな声で言った。

消したはずなのに…。思わず「えっ、そうですか」という言葉が口に出た。慌てて車のキーを取りに行き表に飛び出した。ここでハッとした。とっさのことで「ありがとうございます」とお礼を言えなかった。

ところが、先ほどの男性の姿がない。通りに出て見渡したが見つからない。一本道なので徒歩ならそんなに遠くには行っていないはず。

ひょっとすると、車の中からつけっぱなしのランプに気付いて、わざわざ車から降りて教えてくれたのかもしれない。

玉置さんは「もしこれが自分だったらどうだろう」と思った。そうまでして、教えてあげることができるだろうかと。

翌日、この出来事を生徒たちに報告した。「その人にお礼が言えず後悔しています。お返しができないので、その代わり誰か他の人に親切をしようと思いました。

親切を次から次へとのバトンタッチしていく、恩送りです」と。感謝と反省の気持ちを込めて。

<中日新聞掲載2013年8月25日>

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