『親ばかですが… 』|ほろほろ通信 志賀内泰弘

瀬戸市の加藤太伸さん(61)の娘さんはアパレルメーカーに4年間勤めていた。ところが、突然辞めて転職するという。これには大反対した。東京本社で商品企画の部署に就き、将来を有望視されていた。

大企業なので安定もしている。転職希望先はベンチャー企業。誰もが知る有名な会社ではあるが、勤務時間が長いなど労働条件が厳しくて離職率が高い。しかし反対を押し切り、勝手に転職してしまった。

しばらくして娘さんから加藤さんに手紙が届いた。

「必死に働いても仕事が終わらず、会社を出るのは毎晩10時です」
「やっぱり苦労している」

と心配したが、続けてこんなことが書かれてあった。

「でも勉強になり毎日が楽しいです。この前、同期の友人から『上司に理不尽な理由で怒られた』という愚痴を聞きました。

でも、私は一度も理不尽な怒られ方をされた覚えがありません。理不尽だと思う人に会ったこともありません。

人に注意された時『わざわざ注意してくれるなんて、面倒くさいのにありがたいなあ』と思えるからかもしれない。

そんなふうに人に感謝できる人間になれたのは、今まで育ててくれたお父さんとお母さんのおかげです」

さらに、

「人に感謝できる機会が多いと、つらいことが減るだけじゃなくて、やる気も出る。すると自然と周りに人が集まり助けてもらえるんだよね」

「どんな教育をされたのですか」と加藤さんに尋ねた。すると「それが思い当たることがないのです。ただ、自分の損得ばかりで物事を考えるなとは言い聞かせていました。親ばかですが、うれしいです」と。

<中日新聞掲載2013年8月18日>

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