『兄弟の遅刻の理由』|ちょっといい話 志賀内泰弘

安城市の片桐さおりさん(41)の家の前には長い長い一本道がある。両側はほとんどが田んぼだ。その道は通学路になっていて小学生の分団が通る。

一つの班は平均10人程度。それが10班以上も延々と連なって歩いて行く。片桐さんは洗濯物を干しながら、毎朝その様子を見ている。班長の子どもは大変だ。歩くのが速い子もいれば遅い子もいる。中には、ふざけて田んぼに落ちてしまう子もいるという。

ある春の日のこと。すべての班が通り過ぎてしばらくして、見覚えのある二人兄弟の子どもが通り掛かった。お兄ちゃんの方は遅刻が多いと耳にしたことがある。

その時、お兄ちゃんが1年生になったばかりの弟に、こう言うのが聞こえた。

「犬にあいさつしに行くぞ」

弟は道端に座り込んだまま動かない。うつむいて草をちぎっている。何とか歩かせようとして、近所で子どもたちに人気のゴールデンリトルリバーを飼っている家まで誘い出しているのだ。

その後もよくよく見ていると、「そろそろオタマジャクシがいるかな」と少し先の田んぼをのぞき込んだりして、前へ前へと歩かせる。

片桐さんはハッとした。このとき初めて遅刻の理由がわかった。好きで遅刻していたのではない。学校へ行くのを嫌がる弟を、あやしながら付き添っていたのだ。

片桐さんは「うわさだけで子どもを見ていた自分が情けなくなりました。その後、兄弟ともみんなと一緒に登校できるようになり、ほっとしています」と話す。

<中日新聞掲載 2013年8月11日>

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