『3月11日が誕生日』|ほろほろ通信 志賀内泰弘

美浜町の主婦石黒いさをさん(71)の誕生日は1月17日。18年前、阪神淡路大震災が起きたその日の夜、家族が集まって誕生会を開いてくれることになっていた。

しかし、とてもお祝い気分にはなれず中止に。その後も毎年、家族が誕生祝いをしてくれるというのをかたくなに断り続けた。

代わりに、3人のお孫さんが似顔絵などを描いてプレゼントしてくれたこともある。そして2年前「そろそろ…」ということで解禁にして、16年ぶりの誕生会を催してもらった。

昨年のある日、ご主人のおいの娘さん(当時小5)が遊びに来たとき、ふと、こんなことを口にした。「去年の誕生日は複雑な思いだった」と。

その子の誕生日は3月11日。東日本大震災が起きた日の晩、家族に誕生会をしてもらった。

しかし、次々にテレビに映し出される悲惨な光景を見て暗い気持ちになった。そして、また誕生日がやってくるので少し憂鬱(ゆううつ)だと言う。かわいそうになり、早めにプレゼントを送ってあげた。

そして、3月11日がやって来た。その子の担任の先生は、クラス全員の誕生日を覚えていてくれて、給食の時間にみんなで牛乳で乾杯してくれることになっているのだそうだ。そこで、その子はこんなお願いをしたという。

「大震災で被災された人たちのためにお祈りしてください」と。

先生はそれを聞き、みんなで東北に向けてお祈りをした。その後で、牛乳で乾杯をして誕生日を祝ってくれた。

「私と同じ気持ちになってくれたことがうれしかったです。また先生の配慮にも感謝しています」と石黒さんは話す。

<中日新聞掲載2013年6月16日>

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