前回、小欄で、小牧市の会社員・吉川知宏さん(40)が取引先の人が意識を失って倒れた際に、自動体外式除細動器(AED)などを使って救命措置を行ったという話を紹介した。
吉川さんは初めてのことで、実は緊張と焦りで手が震えていた。救急車を見送った後も、一命を取り留めたという連絡が入るまで「自分がやったことは正しかったのだろうか」と不安で仕方がなかったという。
今年の1月。吉川さんは、たまたま小牧消防署の救急救命士・田島典夫さんと話す機会を得た。
救命活動の際に、いかに不安だったかを伝えると「同じように不安だったという声を聞きます」と言われた。その不安をケアするため、小牧消防署がある試みを始めたとのこと。
その試みについて、田島さんに電話をして尋ねた。すると「まもるくんカード」なるものを作ったのだという。
救急車が来るのでの間、AEDなどの救命活動をしてくれた人たちは多くの場合「自分は間違ったことをしたのではないか」というストレスを感じる。
救急隊員は応急処置をして、病院まで搬送するのが仕事だが、救命の手助けをしてくれた人の心のケアもしたいと考えた。
そこで「応急手当を実施していただきありがとうございました。あなたの勇気ある行動に心から感謝します。今後も救命活動にご協力をお願いします」というカードを手渡す。
東京や岡山など一部地域で実施されている感謝カードをお手本にした。吉川さんからも「経験者としては心が和らぎます」と言われたとのこと。
田島さんは「効果のほどはまだ分かりませんが、市民の救命活動への理解が広まることも期待できればと思います」と話す。