去る3月6日、愛西市の八輪小学校で「つくしご飯の会」なる催しが行われた。
この春卒業する6年生を祝うとともに、その家族や先生、お世話になった交通指導員、評議員、PTA役員など地域の人たちが集まり、一緒に「つくしご飯」を食べる。昭和初期から続く伝統のイベントだ。
2月下旬から今月上旬にかけて、小学校の学年ごと、さらに家庭や地域でツクシ摘み会を行って集める。料理は6年生の保護者が担当。つくしご飯の他にも、地元で採れた食材を使って、レンコンの炒め物、菜の花のおひたし、みそ汁などが並ぶ。八輪学区の自然の恵みに感謝するという気持ちも込められている。
食べ物が不足していた戦時中も、ひもじい思いをしている子どもたちに、おなかいっぱい食べさせてやりたいと、地域の人たちが続けていたそうだ。
ところが、今年はことのほか寒く、ツクシの成長具合を心配する声があちこちから聞こえてきた。
そんな中、開催日前日の朝、一人のおじいさんが小学校の職員室を訪ねて来られた。箱いっぱいのツクシを差し出し「つくしご飯の会で食べてください」とおっしゃった。受け取った職員が名前を尋ねたが、答えずにそのまま帰られてしまった。
校長の長谷川孝臣さん(53)は言う。
「今もどなたなのか分かりません。小学校のOBでしょうか。おかげでつくしご飯をみんなでおいしく食べることができました。幸せいっぱいの感謝の気持ちを伝えるすべがなく、『ほろほろ通信』を通じてお伝えしたいと思います。おじいさん、ありがとうございました」