たった一言でコンテスト受賞作品 ニコニコ賞『おめでとうございます!』

東京都中野区
ベッチーさん

<心に響いた「たった一言」>
おめでとうございます!

<「たった一言で」エピソード>
週末、駅近くのスーパーで買い物をするのが、いつもの行動パターンになっている。

半年ほど前の土曜日のこと、いつもと同じように、「2割引」「3点で千円」などといった表示を探しながら、野菜や肉を買い物カゴに放り込み、いつもと同じようにレジに列を作った。

レジを打っているのは、〈研修中〉のネームプレートをつけた若い女性で、初めて見かける顔であった。

身体の前で両肘を伸ばし、「いらっしゃいませ」とお辞儀をする姿勢は、恐らくはマニュアルに決められた通りであろうか。いつもと同じように、ひとつひとつの商品のバーコードを機械で読み取る。

カゴが空になったところで、彼女は、「お会計は・・・」と言いかけて、あっ、と小さな声で叫んだ。一瞬の間を置いた後、顔を赤らめながら口にした言葉は、

「おめでとうございます!」

レジの合計金額は、3333円を表示していた。3333円・・・別に数字が揃ったからといって景品が貰えるわけではないが、同じ数字が4つ並ぶとは滅多にないことだ。思わずつられて笑顔になった。

「何かハッピーなことがあると良いですね。」

毎週繰り広げられる光景の中で、いつもと、ほんのちょっとだけ違う一瞬であった。その日、実際にハッピーな出来事があったような記憶はない。

しかし、マニュアルで想定していない言葉のやりとりを通じて温もりを感じ、その日一日幸せな気分に浸ったことだけは確かである。

たまには、「想定外」の出来事も良いものである。

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