たった一言でコンテスト受賞作品★ハッピー賞★『この人を見直したんじゃなく、惚れ直したのよ』

東京都葛飾区
ペンネーム:葛飾次郎さん

<心に響いた「たった一言」>
「この人を見直したんじゃなく、惚れ直したのよ」

<「たった一言エピソード」>
私の妻は昨年の大晦日に自宅で倒れ、救急車で搬送された病院のCTとMRI検査の結果、悪性の脳腫瘍と診断された。

医師から「余命1年」と聞かされたときは、一瞬、目の前が真っ白になり、病室に残る妻に「驚かすなよ、大したことじゃやなくて、よかったよ」と、作り笑いをするのに必死でした。

その後、妻は転院先の大学病院で腫瘍の切除手術を受け、放射線治療と化学療法のため2ヶ月の入院生活を送りました。私は毎日、午後になると病室に妻を訪ね、話し相手になったり、欲しい物があれば地下の売店に走りました。

そんな日々の中、看護学校の学生が実習生として妻の担当として付きました。学生が私たち夫婦を見て「仲がよいご夫婦ですね」と言ったとき、妻が待ってましたとばかり、「この人を見直したんじゃなく、惚れ直したのよ」と言ったのでした。

照れ屋の妻がこんなノロケの言葉を吐くのが意外で、私の方が気恥ずかしいような気がしたものです。

妻に外出許可が下り、やがて外泊許可と続き、2ヶ月の入院生活の後、退院しました。私は余命を隠すとともに、どんな代替医療でも効果があると思えるものは試そうと心に決めていました。

そうとは知らず、もともと出好きの妻は、お気に入りの街、浅草、上野、古本屋街の神保町と私をお供に出歩きました。そんなときの妻は元気そのもので、余命1年というのが嘘のようにも思えました。

しかし、妻は40日ほど自宅で暮らした後、肺炎を併発、1ヶ月足らずの入院生活の後、不帰の人になりました。

いつも隣にいるのが当たり前で、40年余り暮らした妻の死は、どうしても受け入れられず、町を歩いていてもそのへんの横丁からスッと姿を現したり、近所のマンションのベランダから「あなた、何しているの、ここよ早くいらっしゃいよ」と手を振ってくれそうな錯覚を覚えます。

寂しさのあまり遺影に向かい、「俺はどうしたらいいんだよ、何で勝手にこんなに早く先に逝っちゃんだよ」と恨み言を言いたくなったりもします。

そんなとき、妻の「この人を見直したんじゃなく、惚れ直したのよ」という言葉を思い起こし、そうだった、また惚れ直されるためには、ここで我慢しなきゃなと、崩れていきそうな気持ちを建て直しては、自分を支える一言にしています。

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