たった一言でコンテスト受賞作品★ハッピー賞★『竹内先輩にーッ、エールを送るーッ!』

神奈川県横浜市
ペンネーム:ka-3さん

<心に響いた「たった一言」>

「竹内先輩にーッ、エールを送るーッ!」

<「たった一言エピソード」>

「応援団長を頼む」

そう監督に言われ、息子は一瞬戸惑った。これはつまり、自分はベンチ入りできなかったということだ。

応援団のない息子の学校は、野球の応援は部員の中から応援団長を選んで指揮を執るしかない。

自分に与えられた使命はこれなのか。「チーム一丸となって」というチームの目標が頭をよぎった。

甲子園の地区予選でベンチ入りできるのは20名。3年生は全員ベンチ入りし、残りの6名は2年生と1年生の選抜選手が入る。

もしかしたらその6名の中に入れるかもと期待していた。朝練も誰よりも早く行って練習し、夕方の練習後には残って毎日欠かさずトレーニングもやっていた。

しかし監督に託された役割は違った。今はその役割を精いっぱい果たすしかない。

それから息子は見よう見まねで応援団の練習を始めた。ここ数年、初戦突破すら叶わないチームにとって、この初戦は何としてでも勝ちたかった。

ベンチ入りできなかったチームメイト、スタンドに応援に来てくれた観客の思いをひとつにまとめてグラウンドの選手に届けるのが自分の役割だと思い、声を枯らして声援を送った。

試合も中盤戦。あと1点入れられたらコールド負けになるところで、監督は最後の引退試合になるかもしれない高校3年生の選手を次々と出しはじめた。応援席にも落胆の空気が流れ始めた。

それでも息子は声を振り絞って応援を送り続けた。しかしそれもむなしく、試合はコールド負けに終わった。

泣きすする声がスタンドのあちこちから聞こえる。

「フレー、フレー、○○高校」

相手チームの健闘を讃え、応援団長同士がエールを交換する。息子の大きな声はグラウンドに響き渡った。

彼の目には大粒の涙が光っていた。エール交換が終わると、席を立つ人たちが出始めた。そのとき息子がスタンドの人たちに向かって叫んだ。

「みなさん、ちょっと待ってください!
高3の先輩達にとって最後の公式戦となった今日の試合に、ひとりだけグラウンドに立つことができなかった先輩がいるんです。
竹内先輩です。試合前に監督から今日はピッチャー陣の肩のケアを頼みたいと言われていたらしいんです。
自ら陰となりチームメイトを支える役割を立派に果たした先輩に、エールを送りたいと思います。どうぞご協力お願いします」と。

「竹内先輩にーッ、敬意を表し—ッ、心からーッ、エールを送るーッ!
フレッ、フレッ、タケウチ、フレッ、タケウチ!」

息子の心の奥深くから吐きだされた大きな声は、スタンドを含む球場全体に響き渡った。

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