ほっこり親孝行ものがたり第3回「旅先からポストカードを送る」志賀内泰弘

娘の亜須香は、二十歳。東京の大学に通っている。国際コミニュニケーションとかいう学科を専攻しており、なんでも、得意の英語を使って、外国の人たちに日本の魅力を伝えるのが夢だと言って入学した。そこまでは、「感心、感心」と見ていた。

ところがだ。一年間、大学を休学して、NGOの活動でアフリカに行くと言い出した。「行きたい」とか「行かせてほしい」という相談ではない。「行く!」というのだ。

そんなことを父親として許すわけにはいかない。現地の治安のこと。食事や感染病のこと。心配ごとが山ほどある。幼い頃、身体が弱く、入退院を繰り返していた時期もある。同居していれば引き止められたかもしれない。だが「決定事項」として電話で告げられ、
「い~いお父さん。今はね、日本も海外も関係ないの」
と言い、その次の日に出発してしまった。おそらく、反対されると思っての作戦だろう。

私も、妻も、おろおろするばかり。早速、インターネットに詳しい甥っ子に頼んで、パソコンで顔を見ながら話せるように設定してもらった。出発した3日目に連絡があった。画面の向こうで、亜須香が手を振っている。
「お父さ~ん、着いたよ」
「お、おお元気か」
「げ~んき、元気ぃ。お母さんは」
「ここよ~」
と妻が横から画面に入って手を振る。う~ん、たしかに。これは便利だ。びっくりしてしまった。これなら安心、と少しホッとした。

ところが、その後、うんともすんとも言ってこない。こちらからアクセスしても、繋がらない。一度だけ、真夜中にメールで「元気ですか」という着信があっただけ。生きていることだけは確かめられが。

そんなある日。妻が、玄関からバタバタと走って来た。
「なんだ、転ぶと危ないぞ」
「あの子ですよ」
「え?!」
奪うようにして手に取る。現地から送って来たポストカードだった。パソコンとプリンターで作ったのだろう。現地の人たちと一緒に写っている写真だ。「元気です」と一言。それだけ。パーティの最中らしく、みんな笑顔だ。妻が言う。
「インターネットもいいけど、わたしはこっちの方が嬉しいわ」
「う、うん、そうだな」
写真は動きはしないが、なんだか温かなものが伝わってきた。

私は、ふと田舎のオフクロの顔を思い浮かべた。この前、妻と一泊で出掛けた時の、京都の絵葉書で書こうと思った。「元気です、元気ですか」としたためて

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