親孝行大賞受賞作品★ハッピー賞★『赤ちゃん通信届けたよ』

【ペンネーム】さたけゆうこさん
【性別】女性
【年齢】51
【住所】福岡県 北九州市

【「親孝行大賞」のタイトル】
赤ちゃん通信届けたよ

【「親孝行大賞」の本文】
真っ白い紙に、ぽっちゃりとしたややしもぶくれの丸を描く。てっぺんに毛が三本。丸の下半分に、ぱっちりおめめと小さな鼻。にっこりおちょぼ口。はい、赤ちゃんの顔のできあがり。かわいらしい赤ん坊は、素人画伯の格好の題材だった。

娘は私の両親にとって初めての孫だった。実家は近くて遠い。車は夫が仕事で使い、公共交通機関は一時間に一本のバスだけという田舎町。生まれたての赤ん坊を抱いてちょっと出かけるにはたいへんなところ。

私は初めての育児にへとへと、いつも疲れきっていた。両親は初孫がかわいいのと娘である私が心配なのとで気もそぞろ。お互いにやきもきしながら毎日を過ごしていた。

特に私はそれまでフルタイムでバリバリ仕事をしていたから、いきなり言葉も通じない娘とふたりきりのアパートに閉じ込められ、世間から取り残されたような疎外感を味わっていた。

それでも、赤ん坊は日々大きくなる。お猿さんみたいだった顔が少しずつ人間らしくなり、笑いはじめる。泣くばかりだったのに、なんとなく意志疎通のできる言葉を口にするようになる。

思えばそれが、辛い気持ちに初めてできた余裕だったのかもしれない。かわいい娘の姿をひとりじめしているのはもったいなくて、私はふと、ペンをとった。できたのはマンガみたいな赤ん坊の顔。でもかわいい。親ばかだ。その親ばかがエスカレートして、私は毎日のように娘の爆笑エピソードを絵に描いた。そしてそれをファックスで実家に送った。

これがまた好評で、両親はすごく喜んだ。実家には私の祖母、娘にとってはひいおばあちゃんがいて、そちらの方が両親よりとても喜んでくれた。明治生まれの祖母は毎日一枚送られてくるファックス用紙が不思議で仕方なかったらしい。それでもうれしさ爆発で、べた褒めの文章でいっぱいのハガキを寄越してくれた。

こうして、娘が無事保育園へ入園し、私が仕事に復帰するまで、素人画伯のファクシミリ赤ちゃんマンガは続いたのだった。今でも両親はそのころのことを懐かしんでいる。祖母は私のつたない絵を死ぬまで大事にとっていた。

当時のファクシミリは受信が感熱紙だったから、時間がたつにつれその線は薄れ、端から黄ばんで汚れていく。しまいには赤ん坊なんだか妖怪人間なんだかわからない絵になっていたのに、祖母はそれ専用の箱を作って本当に大切にしまってくれていた。

両親は今でも私に、あのころはおばあちゃん孝行したねと言う。ついでに自分たちにも親孝行してくれてありがとうと言ってくれる。でも、それは違う。絵を描いて送る。それで私もストレス解消していたんだ。娘は知らない間に私にも親孝行してくれていた。

その娘ももう二十歳。来年は成人式。いつの間にか私がほんとに親孝行される側になる。こうやって親子は繋がっていくんだなと思う。天国のおばあちゃん、実家のお父さんお母さん、もう絵を送ることはないけれど、私はとても幸せです。

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