親孝行大賞受賞作品★ちょっといい話で賞★『親孝行のかたち』

【お名前】吉澤さん
【性別】女性
【年齢】31
【住所】埼玉県北足立郡

【「親孝行大賞」のタイトル】
「親孝行のかたち」

【「親孝行大賞」の本文】

「北海道に行っちゃった、ななにまた会いたいねぇ」
おばあちゃんが独り言のようにぼそっと呟いた。「なな」とは私の妹の名前だ。妹は北海道の専門学校に進学したため、以前のように気軽に会えなくなっていた。

それならばと当時大学生だった私はアルバイトをして旅の資金を貯め、おばあちゃんを北海道に連れていく旅行を計画した。どうせ行くのならおばあちゃんがびっくりするくらい楽しく、就職したらなかなかできないような旅にしよう。

私はおばあちゃんに、たっぷり一週間空けておいてくれと頼み、旅行資金が貯まった夏におばあちゃんと旅に出た。今回の旅では飛行機は使わない。往路は住まいの埼玉から茨城の大洗まで電車で移動し、船に乗った。

おばあちゃんが船酔いするのではと心配もあったが、そのようなことも一切なく、船内での食事を堪能し、デッキに出て海風を感じ、穏やかな揺れで目覚める、特別な一泊だった。現地では妹の家に泊まり、三人でたくさんお出かけをした。

復路は、当時はまだ運航していた寝台特急「北斗星」に乗り込む。小声で夜遅くまで話し込んで、私の冗談にふふふと笑うおばあちゃん。私にとっても、久しぶりにおばあちゃんを独占できた時間だった。帰ってからご近所さんに、
「孫が北海道に連れて行ってくれてね・・・」
と楽しそうに話すおばあちゃんを見て、少しはおばあちゃん孝行ができたかなと、照れくさいながらも少し誇らしい気持ちになっていると母がやってきて、
「最高の親孝行だね。ありがとう」
と私にお礼を言ってきた。
「おばあちゃん孝行はできたかもしれないけど、お母さんは北海道に連れていけなかったし、親孝行は何もできていないよ」
と言う私に、
「子どもが自分の親を大事にしてくれるのって、すごく幸せな気持ちになるものなの。あなたにもきっといつか分かる日が来るよ」
と返して目を潤ませた。

思いがけない親孝行の形に、
「ふぅん。そういうものなんだ」
とそっけなく返しながらも、私まで幸せな気分になった。

時は流れ私も三十路を迎えた。いつか来る日を楽しみに、新米母の私は今日も、育児に全力投球するのでした。

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