親孝行大賞受賞作品 ★こころぽかぽか賞★ 『アルバム』

【ペンネーム(掲載時のお名前)】霧島しほんさん
【性別】女性
【年齢】36
【住所】兵庫県丹波市

【「親孝行大賞」のタイトル】
「アルバム」

【「親孝行大賞」の本文】
9月13日。両親の結婚記念日。私達、兄弟姉妹四人は贈り物に頭を抱えていた。欲しい物はもうあまりない。物より想い出をプレゼントしたいけど、疲れてしまうので旅行も乗り気ではないことを知っている。沈黙を破ったのは妹の一言だ。

「想い出をプレゼントする他の方法、ある・・・! アルバムはどう」

両親が生まれてから刻んできた歴史、父と母が出会い、共に歩んできた軌跡のアルバム製作が始まった。両親にバレないように押し入れをひっくり返し、家中にある写真をかき集める。

しかしどれだけ探しても赤ちゃんの写真が見つからない。出てくる赤ちゃんの写真は、ほとんどが私達四人のもの。そもそも皆が同じ遺伝子なので赤ちゃん時代の顔の違いも分からない。両家の祖父母を巻き込み、手伝ってもらいながら、なんとか子ども時代の写真を集めることが出来た。

こうして見ると、なんとも不思議だ。親にも子ども時代があったはずなのだが、私が記憶している姿が当然大人なので、写真の中で泣いたり笑ったりむすっとしたりしている子どもと、両親がスッと結びつかない。

母は、子どもの頃は食べることが大好きで、ぷくぷく肥えている。父と出会い、子どもを四人産み落とす度に、どんどん痩せていったようだ。父は全然変わっておらず、我が父親ながら現役で格好良い。髪も薄くならず、体型も変わらず、良い老け方をしたようだ。

二人のアルバムには、途中から私達が登場する。大切な笑顔がどんどん増えていく。それと同時に、大切な笑顔も消えていく。若くして亡くなった母の弟や、亡き曾祖父母の姿、そして新しく家族になった妹の子ども達とが、折り重なって一冊になったアルバム。両親は喜んでくれるだろうか。

緊張しながら晩ご飯の後にケーキとアルバムを贈った。妹が嫁いだ時も泣かなかった父の目が、赤くなっている。両親は、自分達の赤ちゃんの頃の写真を見ることがなかったので、本当に驚いてくれた。

母は「最高のプレゼントや。あんたらぁ産んで、おかあさん幸せや。この人、選んで良かった」

と言って、父の手を握った。両親がいちゃついているところなんか、見たくない。何はともあれ、サプライズは大成功した。私達は照れ隠しですぐに解散したが、アルバムを贈ってから、何日経っても、心は温かいままだ。戸棚にあるアルバムは、いつでも家族を優しく見守ってくれている。

時間と機会は有限だ。いつまで、両親が元気でいてくれるか、私達には分からない。最後の瞬間は、ある日突然やってくる。私はあと何回、両親の笑顔に立ち会えるだろうか。

ちなみにアルバムには、まだ写真が付け足せるように、余白を沢山残してある。結婚していない残り三人の未来へ、期待と希望を込めて。

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