ほっこり親孝行ものがたり『第6回 思い出の服で給食袋を作ってもらう』志賀内泰弘

橘明香里は、ただいま子育て中。長男は、この春、小学校に入学する。二人目の赤ちゃんがお腹の中にいる。ずいぶん大きくなって、先週から休暇に入った。

明香里は洋裁が苦手だ。長男の幼稚園では、ランチョンマットを自宅から持って来ることになっている。どのママさんたちも、「ここぞ」とばかりに力を入れ、色とりどりの生地で手づくりする。でも明香里は、母親に頼んで作ってもらった。実家が近いと、こういうとき、便利だ。

「わー何これ!真ちゃんママ、こんなオシャレなの作れるの?」
「ううん、案外カンタンよ」
なんて、ママ友たちには、つい嘘をついた。明香里は、また母に頼む。
「ネーネー、お母さん。今度は給食袋作ってほしいの」
「あなた、まだ作ってなかったの?来週、入学式じゃないの」
「う~ん、やろうとは思ってたんだけど・・・」
「仕方ないねえ・・・実はさ、こんなのが押し入れから出て来てさ」

そう言い差し出したのは、明香里が幼い頃にお気に入りだったピンクのワンピースだった。当時、テレビの歌番組でアイドルが着ていたものを、「欲しいよう~買って~」とせがんだら作ってくれたのだ。

「よく取ってあったわねぇ」
不思議と色あせてもいない。よほど、きちんと保管してあったのだろう。
「これで給食袋作ってあげるよ」
「ごめんね、いつも」
「そうよ、いいかげんに少しくらい洋裁もできないと、貴志さんに愛想つかされるわよ」
かなり不機嫌そうだ。でも、旦那のシャツのボタン一つさえ、繕うのに四苦八苦だ。

さて、その翌日のこと。親戚から送って来たリンゴを持って、父がやって来た。 
「母さんなんだか、楽しそうに縫い物してたぞ」
「え?! 楽しそう? 私には、嫌そうなこと言ってわよ」
「あの頃の明香里は可愛かったわねぇ~なんてニヤニヤしながらな。娘のために作った服が、今度は孫のために役に立つなんて、お婆ちゃんとしてはこの上ない幸せなんなじゃないのか」
「え?・・・そうなの?」
「そういうもんだ」
「へ~じゃあお父さんにも頼もうかな」
「何を」
「うちの旦那、不器用なのよ。納戸に収納棚作ってくれないかなぁ」
父は「仕方ないなぁ」と苦笑いした。

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