親孝行大賞受賞作品★いい話で感動したで賞★『本当の親孝行を』

【お名前】森屋さん
【性別】女性
【年齢】61
【住所】埼玉県東松山市

    *    *    *    *    *

『本当の親孝行を』

これは自慢だが、私は親孝行な娘だ。もう61歳だから「娘」というのも照れ臭いが、舅姑、実父母。四人の親に対して、尽くした。尽くしている。

舅と実父はすでに他界したが、それぞれが入院している時は、毎日のように病院へ行った。舅にいたっては、夜の付き添いから下の世話まで、フルタイムで仕事をしている身でありながら、よく頑張ったと自分でも思う。

今は、88歳の姑と91歳の実母。二人ともデイサービスを活用している。同居している姑には、朝に夕に食事を運び、実家の母の所へは、週3〜4回は行って、買い物に連れて行ったり、掃除をしたりしている。

二人の世話があるだろうと、今年定年退職したが、再雇用の話は断った。退職したとたん、実家の母は「認知症の初期段階」と診断されたので、正解だったと思う。というわけで、私は頑張った。頑張っている。

特に実家の母は、それまで入院もデイサービスも経験がないので、まずは介護認定の申請をした。結果は要介護2。希望通り、デイサービスに通えるようになったが、着ていく服を選んだり、持っていくものを準備したりができない。兄夫婦と同居しているが、仕事をしているので、なかなか面倒をみてくれない。週二回だが、私が車で30分の実家に行き、荷物を持たせて、送り出している。

「いい娘さんですね」
と、デイサービスのスタッフの方に褒められ、
「ありがたいんですよ」
と、母もニコニコ顔で返事をしている。
誰が見ても、私は孝行娘だ。

ところが、そんなある日のこと。母の部屋を片付けていて、洗濯物がたまっていることに気づいた。下着も何枚かある。何気なく、
「私が持ち帰って洗ってくるね」
と、ビニール袋に入れようとすると、母が、
「いいよ。洗濯くらい自分でする。お前にそこまで迷惑をかけたくない」
と奪いとったのだ。私が唖然としていると、
「嫁に出した娘に、そこまで面倒かけられないよ。もう充分やってもらっているんだから」
と、母は淋しそうに笑った。
私は「やってあげている」ことにいい気になっていたのか…。思えば母は、最近口癖のように「すまないね」と謝る。逆の立場なら、私も心苦しくてならないこともあったのだろう。
「わかった。じゃ洗濯は自分でやってね」
母にビニール袋を渡すと、母は笑顔で、
「大丈夫。自分でできるから」
とくりかえし、袋を握りしめた。

手を出さないことも親孝行なのかもしれない。無理をせず、自分が楽しむことも親孝行なのかもしれない。親の立場で「自分の子どもたちにはこうしてほしい」と考えたら、すぐにわかることだった。

私はこれから、自分の時間も大切にしよう。姑や母の犠牲になるのではなく、本当の意味の親孝行をしていきたいと思った。

最新情報をチェックしよう!
>プチ紳士・プチ淑女を探せ!運動とは?

プチ紳士・プチ淑女を探せ!運動とは?

ゆっくりでいい。一歩ずつでいい。
自分のできる範囲でいいから、
周りのことを思いやる世の中を作ろう

CTR IMG