親孝行プロジェクト『誕生日は、親に感謝する日』志賀内泰弘

子供にとって、誕生日はとても楽しみなものです。
 クリスマスと並んで一大イベントでしょう。
なぜなら、誕生プレゼントがもらえるからです。
「ねえねえ、今度の誕生日に○○買って~」
と、両親にせがんだ経験のある人も多いに違いありません。

でも、実は・・・。
誕生日は、プレゼントをもらう日ではないんです。
もちろん、もらってもかまわない。
だけど、同時に、すべきことがある。

そう、
「今日まで育ててくれてありがとう」
と親に感謝する日でもあるのです。

拙著「眠る前5分で読める 心がホッとするいい話」(イーストプレス)の中に収めた、
そんなエピソードを転載させていただきます。

   *   *   *   *   *   *

「笑顔の理由」

不思議な友人がいます。姜恵蘭(カン ヘラン)さんです。知る人ぞ知る、キムチ製造販売で有名な株式会社第一物産の社長です。ちょっと元気がない時に、ちょっと話をするだけで元気になってしまうのです。それはまるで、魔法にかかったかのように。

その秘密は「笑顔」にあります。まるでヒマワリのようなのです。なぜいつも、こんなに満面の笑みを湛えられるのか。不思議でなりませんでした。きっと、よほど幸せな家庭に育ったに違いないと思っていました。

ところが、ある日のこと、彼女と話をしていると、
「昔、私が大切にしていたピアノが、ある日、家に帰るとなくなっていたのです」
唐突に言いました。キョトンとして、
「どういうこと? 泥棒でも入ったの」
と聞くと、彼女のお母さんが、人にあげてしまったというのです。ますます、どういうことかわかりません。
「ちゃんと詳しく教えてよ」
と言うと、順序だてて話してくれました。

彼女のお母さんは、たいへん面倒見の良い人で、困った人がいるとほっておけない性分だったそうです。そのため、家にはいつも誰彼か親戚や友人が泊まっていました。親戚といっても、一度も会ったことのない、遠い遠い親戚です。その親戚が一家で住み着いたりしていました。

ある日、家に帰るとピアノがなくなっていました。母親に、
「ピアノはどこにいったの」
と尋ねると、必要な人にあげたと言われました。実は、そんなことは、日常茶飯事でした。

小学生の高学年の頃のこと。大好きなアイドルグループの曲を宝物にようにしているラジカセで聴いていたら、スゥ~と母親が部屋に入ってきて、そのラジカセを持っていってしまった。「どうするの!」と言って怒ると、母親はピシャリとこう切り捨てたといいます。

「いらないものをあげるんじゃなくて、大切にしているものをあげれば大切にしてくれる。田舎の人たちは、勉強したくても物がないんだ。必要とする人に必要なものをあげるんだ」

と。ちょうどその時、彼女の家には、故郷の韓国の田舎から遠い遠い遠~い親戚が母親を頼って泊まりに来ていました。その家族にあげてしまったのです。
他にも、お気に入りの洋服など、知らぬ間になくなることは当たり前の日々でした。敬虔なクリスチャンである、そんな母親の口癖は、
「求めるな、与えよ」
「求めるよりも、求めている人に与える人になりなさい」
だったそうです。

ここで合点がいきました。彼女の笑顔の理由です。彼女は、目の前にいる人に、いつも何かを与えようとしている。それは物ではない。でも、「与えよう」という強い気持ちが「笑顔」になって現れるのだということを。恵蘭さんは、お母さんを亡くした後、社長業だけでなく、「与える」という遺志も立派に引き継いでいます。笑顔はすべての人を幸せにするエネルギーです。

さて、そのお母さんにまつわるエピソードをもう一つ。
ある日のこと、母親の知人のカナダ人一家が家に泊まりに来ていました。知人と書いたのは、「友人」ではなく、ただの「知り合い」だということをあえて区別するためです。

お母さんは彼女に、「このカナダ人一家を東京観光に連れて行ってあげなさい」と言いました。実は、その日は彼女の15歳の誕生日でした。朝からワクワクドキドキしていました。お母さんは、何をプレゼントしてくれるだろうと楽しみにしていました。そこへ「観光に連れて行ってあげなさい」と言われたので、むくれて出掛けました。

そんな彼女の嫌々の態度は、カナダ人家族にも伝わったようでした。彼女は帰ってくるなり、お母さんに文句を言いました。
「今日は私の誕生日なのよ。なぜ、そんな日に、他人の観光案内をしなくちゃいけないのよ」
と。すると、いきなり母親の鉄拳が飛びました。平手ではありません。ゲンコツだったそうです。そして、言いました。
「誕生日だからといって、何かをしてもらおうとか、祝ってもらおうという気持ちがダメだ。あなたはいったい、何をしてもらおうと思っているの? 誕生日というのはね。生まれて来たこと、育ててもらったことに感謝する日なのよ」

15歳の少女の心だけではありません。こうして書いている、いい歳をしたオジサン(筆者のこと)にとっても衝撃の言葉であります。なぜなら、「誕生日に何をもらうか」ばかり考えて生きてきたからに他なりません。

さらに、お母さんは言います。
「何かをすることによって、相手に見返りを求めたりしてはいけない。相手をどれだけ楽しませたり、喜ばせたりしようとする気持ちがないから不満に思うのだ。お前は、人間がちっちゃい」
思わず、「ハイ私も小さいです」と言いそうになりました。

彼女は、この教えを受けて育ったせいでしょう。人を元気にする、人を喜ばせる名人です。ちょっと心が疲れた時、彼女から電話がかかってきます(これが不思議!)。話をしているだけで、元気になります。これも以心伝心というものなのでしょうか(超能力か?!)。 

別に用事はないようです。雑談をして電話を切ります。もちろん、会って話をすると、その笑顔を見ているだけで幸せな気分になります。彼女の名前の姜恵蘭の「恵」という字は、「恵まれる」という意味ではなくて、「人に恵みを与える人間になりなさい」という思いを込めて、お母さんが付けたものだそうです。

それだけに、「今この時」恵みを必要とする人が誰なのか、本能的にわかってしまうのかもしれませんね。微力ですが改めて、与えられるよりも、与える人になりたいと思いました。

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