ちょっといい話『喪中のハガキと、おせっかい』志賀内泰弘

志賀内は、「おせっかい」です。「おせっかい」というと、悪いイメージがあります。「親切の押し売り」とか「ありがた迷惑」とか。私自身も、「おせっかい」をされて、相手を煙たく思ったことがあります。それどころか、相手に暴言を吐いたことさえも・・・。

それでも、承知しつつ、「おせっかい」をします。もちろん、それが「親切」だと信じてのことです。

「親切」はオーケー、「おせっかい」はダメ、だとすると、「親切」と「おせっかい」の境目はどこにあるのか?という疑問が湧いてきます。明確な答えはありません。同じことをしても、答が変わります。

例えば、電車でお年寄りに席を譲ったとしても、「親切」だと喜んでもらえるか、それとも「おせっかい」と迷惑がられるか、それは、受け止める相手の「心次第」だからです。

では、どうしたらいいのか?

それには、迷惑がられるのを承知で「親切」することです。たくさんの「親切」をするうちに、「親切」と「おせっかい」の境界がなんとなくわかってきます。しかし、どんなに経験を積んでも、「おせっかい」だと言われることがあります。でも、私は、「おせっかいかもしれないけれど・・・」と迷いつつも、「これは親切だ」と信じて、「役に立てませんか」と声を掛けます。時には、半ば強引に行動に移すこともあります。

もう20年近くも前のことです。「心の師」が自ら命を絶ちました。その直前に、師の妙な行動に目が付きました。「おかしいな」と思いはしたものの、かなり年長の尊敬する人だったので、「大丈夫だろう、私の他にも頼れる人が大勢いるはず。おせっかいをしたら、失礼になる」と、連絡することも見合わせました。そして、しばらしくて・・・訃報が届いたのでした。

後悔しました。
「なぜ、あの時、電話の一本もかけられなかったのか?」
「おせっかいするべきだった」
「そうすれば・・・充分に役立てなくても、死ぬまでに至らなかったかもしれない」
その時です。
「おせっかい」だと思われても、怒られたら謝ればいい。そう腹をくくればいいのだと思いました。以来、「これは親切なんだ」と信じて、「おせっかい」をするよう心掛るようになりました。

さて、その「おせっかい」で、志賀内は人生が変わったことがあります。

今年の11月末、
「心の師」の一人であるS先生が病気で亡くなられたことを、奥様からの喪中のハガキで知りました。遠方ということに加え、今はコロナ禍ということもあり家族葬が多く、、7月に亡くなられたことを存じ上げなかったのです。
ショックでした。
最初にお目にかかったのは、30年ほど前のことです。勉強会に講演に来て下さったのです。それから、お互いにニュースレターのやり取りを続け、10年ほどが経ったある日のことでした。
「名古屋に行くので会いましょう」
という電話がかかって来ました。名古屋駅のホテルのラウンジで会うなり、開口一番。
「こんなことやっててはあかん」
とたしなめられたのです。
「こんなこと」とは何か。
それまで作った俳句をまとめて、処女句集を発刊したことでした。自費出版です。
「自費出版はあかんでぇ。ちゃんと、バーコードが付いた本屋さんで売ってる本やないとあかん。出版社の社長を紹介したるさかい・・・」
と言い、ラウンジのレジ脇のところにある公衆電話から、電話をかけられました。
 (まだ、携帯電話が普及する前のことです)
電話が先方に繋がると、少し話した後、
「代わる」
と言い、受話器を私に差し出されました。

相手は、大阪の出版社「JDC」のあんがいおまる社長。相田みつをさんを世にデビューさせたことで知られる人です。その場で、出版が決まりました。わずか5分ほどの出来事でした。
「いい話 心に一滴たちまちさわやか」
この本が、志賀内のデビュー作になりました。

あの「おせっかい」がなかったら、私の人生はまったく違っていたものになっていたでしょう。どこの馬の骨ともわからない、実績ゼロのしがないサラリーマン。そんな人間が本を出せたという理由は一つ。S先生の「信用」です。その「信用」をバックに、出版を引き受けて下さったのです。

時を経て、あれから20年。
今年、友人から「彼のこと、頼む」と、ある人を紹介されました。スタバで会うなり、その人は言いました。
「作家になりたいので、会社を辞めることにしました。奥さんは大反対ですが・・・」
それはたいへん!でも、その勇気は素晴らしい!!

そこで、JDCのあんがいおまる社長に、その場で電話をしました。20年前のあの日と同じように。
「志賀内さんが推薦するなら」
と、その場で出版が決まりました。まだ社長は、彼の原稿を一行も読んでいないのに・・・。人生は、「おせっかい」と「信用」で変わるのです。私も、それで人生が変わった。彼の人生も変わることを祈っています。

偶然でしょう。彼が出版デビューした「この夏」に、S先生が亡くなられました。でも、「おせっかい」のDNAは、しっかり、弟子として引き継ぐことができました。
「おせっかい」で、けっこう辛い目に遭ったこともあります。「よかれ」と思って、あれもこれもと親身になったのに、「おせっかいだ!」だと言われて、縁遠くなってしまった人もいました。

きっと、S先生も、同じだったに違いないと、今頃気づくのです。「親切」と「おせっかい」の境目は、未だにわかりません。でも、はっきりとわかること。100やって、90くらいは感謝もされない。5くらいは、迷惑がられる。3は、怒られる。
 
その根底にあるのは、ギブアンドギブの精神です。感謝されたいと思わない。見返りを期待しない。それは、「プチ紳士・プチ淑女を探せ!」運動の理念です。

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