ちょっといい話「『心揺るがす講演を読む』を読む」志賀内泰弘

会社のみならず、教育の現場でもテレワークの必要性が叫ばれるようになりました。私も、ZOOМでの会議やイベントに参加し、
「ああ、けっこう上手くできるものだ。会いに行かなくても、案外これで用事は足りるかも」
と思いました。新型コロナウイルスの収束如何にかかわらず、リモート化の勢いは留まらないでしょう。

しかし、それに伴い危惧していることがあります。それは、人と人がリアルに顔を合わせる回数が少なくなると、何か大切な物を失ってしまうのではないかと思うのです。それが「何か」具体的にわからないけれど、モヤモヤとし感情を抱いていました。

そんな時、日本講演新聞編集長・水谷もりひとさんが監修・編集された「心揺るがす講演を読む」(ごま書房新社)を読んでいて、ハッとしました。

その一つの講演録より、映画プロデューサー・明日渉さんのお話です。明石さんは大学卒業後、三船プロに就職しました。黒澤明監督の「羅生門」「七人の侍」「用心棒」などの名作で主演を務めた三船敏郎さんが起こした映画制作会社です。明石さんは、三船敏郎さんのエピソードを次々と語ります。

三船敏郎さんが、初めて主演したのが谷口千吉監、黒澤明監督の「銀嶺の果て」でした。3人の強盗が雪山に逃げ込んで、追い詰められていくという物語です。よって、ロケは雪山で行われます。その時のことです。

主演の三船敏郎さんは、スタッフの機材を担いで誰よりも早く山へ登ったというのです。明石さんは言います。
「映画も舞台もそうですが、仕事ってみんなで作るものです。監督、俳優、キャメラマン、照明、美術、大道具、小道具、衣装メイクなど、各部門のエキスパートがいます。その人たちが一つになってゴールを目指します。役者だから役者の仕事をすればいいんじゃないんです。三船さんはいい作品を作ろうとする時、みんなと和を取ることをまず考える人でした。スタッフにはいつも気づかっていました」

そうなのですよね。役職が偉くても、部下と一緒になって汗を流す人は、みんなから人望が厚くなります。そういう人をトップにするチームは強い力を発揮できるのです。

「もの」は、一人で作るんじゃない。みんなで作るんです。仮に分業だとしても。設計や広告、ウェブデザインやウェブマーケティングは、自宅に籠ってできる仕事かもしれません。しかし、それは、全体の仕事からしたら、一部分です。それで、本当に「いいもの」が作れるのだろうか。

また、人と人が顔を合わせて、初めて「一緒の苦労を分かち合っている」という気持ちが生まれ、「働く」喜びが沸き上がってきて、「また次も頑張ろう」という意欲に繋がるのではないか。

明石さんは、こうも言います。
「『子は親の背中を見て育つ』とよく言いますね。まさにこれです。三船さんは我々社員に『これしなさい』とか『あれしときなさい』と指示したことは一度もありませんでした。いつも我々社員は『社長にやらせてはいけない』と先回りしてやるようなにっていきました」

そうなんですよね。会社の仕事って、先輩の背中を見て、成長していくものです。会社だけに留まりません。教育の現場では、運動会や修学旅行など、体験学習が自粛や縮小されています。仲間と一緒に「何かをする」ことは、そこに様々な問題が生じ、それを乗り越えていくことから人は成長します。

きっと、会社の社長さんも、学校の校長先生も、そんなことはとうに承知されていることでしょう。でも・・・コロナも不安です。できるかぎりの対策は必要です。実に、悩ましい。

しかし、そんな中でも、「大切なことは何か」を見失わないようにしなくてはと思いました。

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