ちょっといい話『人間も自然の一部である』志賀内泰弘

既成概念を一掃してしまう本に出くわしました。
「樹木たちの知られざる生活 森林管理官が聴いた森の声」(ハヤカワ文庫)です。著者は、ドイツの森林管理官のペーター・ヴォールベンです。

ペーターはある日、自分が管理しているブナの林で、いくつかの「岩」を見つけました。「なぜ、こんなところに?・・・」と近づき、表面に貼っている苔を取り除いてみると、それはなんとブナの切り株でした。
さらに、ナイフで表皮を削ってみると、中から緑色の層が現れました。それは、葉緑素。つまり、まだその「岩(切り株)」は生きていたのでした。

辺りには、400~500年も前に切り倒されたブナの切り株がいくつもありました。どう考えてもおかしい。葉っぱがなければ、木は光合成ができません。つまり、生きてはいけないはずです。とても科学的な論理では説明がつきません。

よくよく調べてみると、その切り株はすぐ近くの木の根っこと繋がって、栄養をもらっていたというのです。また、根っこの先が菌糸に包まれて、その菌糸が栄養の交換を手伝ってくれていたというのです。
なんと500年も!

一見、木はそれぞれが独立して生きているように思えます。木は、自分のことしか考えないと思い込んでいました。ところが、木は、たくさんの木たちと手を組んで、生態系を作り出しているそうなのです。

これには理由があります。もし、森や林で一本の木が倒れてしまったとしましょう。台風などがやってきた時、その森に大風が吹き込みます。すると、バッタバッタと倒れてしまう。そうならないように、どの木も大切な仲間なのです。一本が朽ちたり倒れたりしたら、周りの木が助けようとするのです。

もう20年ほど前のことです。春日大社の葉室頼昭宮司にお目にかかる機会を得たときのことです。応接に入るなり、宮司が一言目におっしゃった言葉が忘れられません。「人も自然の一部です」

葉室宮司は異色の神官でした。公家の藤原家出身で、初等科から学習院で学ばれました。その後、大阪大学医学部で学び、形成外科院を開院されます。その後、同時に神職も務められたという経歴も持ち主でした。そんな葉室宮司の言葉だからこそ、重みを感じました。

木にできて、人間にできないわけがありません。そう「助け合い」です。困った人がいたら、サッと手を差し伸べる。情けは人の為ならず。それは、人間全体のためでもあるのですから・・・・

前述のブナのエピソードを、「木」という部分を「人」に置き換えることができます。そうです。人間も自然の一部なのだから。

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