ちょっといい話『才能の貯金箱』志賀内泰弘

ちょっと恥ずかしいお話をさせていただきます。私は、高校生の頃から、
「俺は将来、大物になるんだ。才能に満ち溢れて、開花するのを世間が待ち望んでいる」
というくらい、自意識過剰でした。

それは、「根拠のない自信」に支えられたものであって、何一つ実績はありませんでした。勉強もダメ。部活もせず帰宅部。親友と呼べる友達もいなければ、もちろん彼女もいない。

にもかかわらず、自信に満ち溢れているという「困ったちゃん」でした。

卒業前に、クラスで色紙やノート、スケッチブックが回されてきました。「思い出に」との寄せ書きです。
そこに私は、サラサラッと自分のサイン(本名)をして「将来価値が出るので仕舞っておいてください」と書きました。今から思うと、「おバカ」もここまでくると、手が付けられませんね。恥ずかしいです。

でも、イメージとしては、作家かミュージシャンになるつもりだったようです。

さて、つい先日、森見登美彦著「夜は短し歩けよ乙女」(角川文庫)を読んでいて、ハッとしました。なんと、「あの頃」の私と、そっくりの人物が出て来るのです。

主人公の私(大学院生の男性)は、京都市内に大流行した風邪で寝込んでしまいます。身体が弱ると、気も弱くなります。上がる見込みのない学業成績。大学院に進んだのは就職活動の先送り。機転もきかず、才覚もなく、貯金も腕力も根性もない。ないない尽くしの人間であり、とうてい世を渡っていけないと思っています。

ハッと主人公の「私」は思い出しました。1回生の時、「能ある鷹は爪を隠す」という言葉を信じて、「才能の貯金箱」を押入れに隠したことがあったことを。早速、押入れを開けると、そこは大きく育ったキノコだらけ。でも、キラキラ光る箱が見つかりました。

「私」がその箱を開けてみると・・・。

一枚の紙切れが出てきました。そこには、こんな文字が書かれていました。

「できることからコツコツと」

・・・チャンチャン、というお話です。

もう茫然としました。だって、45年前の私と同じなんですから。でも、幸いなことに、私は「今」、なんとかかんとか「作家」になりました。とりあえず、ときどきに本をお求め下さった方に、生意気にもサインをさせていただいています。夢がかなったわけです。
「スゴイじゃないですか!」
と言われることがありますが、ぜんぜんそんなことはありません。

「あの頃」、「できることからコツコツと」やっていたなら、たぶん二十代で作家になれていたでしょう。
いや、「できることからコツコツと」やっていたなら、会社を興して上場させていたかもしれません。

それに気づくのが、あまりにも遅かった。なんとなく「できることからコツコツと」やるのが、遠回りのようでいて、最大の近道であることに気付くのは、四十歳近くになってからです。それも、いまだに「なになんとなく」ですから、ときどき「コツコツ」をサボるんです。

それでも、ようやく少しは「コツコツ」が身について来たのは、四十代半ばでしょうか。人生後悔したことは一度もありません。やり直ししたいと思ったこともありません。

でも、夢をかなえられるのに、メチャクチャ年月がかかってしまった理由はわかります。「できることからコツコツと」やっていなかったから。なんとかでも、夢がかなえられた理由も、はっきりわかります。「できることからコツコツと」やって来たから。

なんで、こんなに大切な事を誰も教えてくれなかったんだろう。いや、父も母も、「続けることは大切だよ」と言ってくれていたような気も・・・。学校の先生はどうだったかな~。

国語も大事、数学も大事でしょう。でも、小・中学校の科目に「できることからコツコツと」という科目があったなら、人生は変わっていたかもしれません。

文部科学省の偉い方々に、中央教育審議会のメンバーのみなさんにお願いしたいです。「できることからコツコツと」を小学校1年生から必須科目にしてください。

「できることからコツコツと」は、凡人が夢をかなえる必須アイテムです。

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