ちょっといい話『悩んでもいいよ』志賀内泰弘

還暦になりました。自分でも信じられません。もう生まれてから60年も経ったの?たしかに、人生を振り返ると、いろいろありました。

大学受験、就職試験に落ちまくって、努力が足りないだけなのに人生を儚んでたあの頃。エゴと自信の固まりでブイブイ言わせて、仕事に熱中して駆け抜けたバブルの頃。今でいう、パワハラに遭って、ストレスで倒れて生死を彷徨ったあの日。

両親の看病・介護でフラフラになり、仕事との両立ができずに退職したこと。作家になりたいけど、どうしたらいのかわからなくて、悶えて右往左往した時期。まさかカミサンが癌になり、看病介護の果てに看取った6年間。

たしかに、60年間、濃い出来事のオンパレードでした。でも、なぜか、60年も経ったとは、思えないのです。

「何歳ですか?」
と尋ねられると、なんのためらいもなく答えます。
「16歳です」
相手は、
「いいですねぇ。そういうふうに、いつも心を若く持つことは、心身ともに歳を取らない秘訣らしいですよ」
と言います。一般的には、そうなのでしょう。

でも、私の場合は違うのです。本当に、16歳のままで、時が止まっているのです。そう説明すると、親しい友人は眉をひそめてアドバイスしてくれます。
「それは、ヤバイよ。仮にそう思っていても、黙っていた方がいいよ」
と。どうも、私は、ヤバイ人間らしいでのす。

でも、誤解がないように説明しておくと、「16歳です」と答えても、それは、100パーセント、キラキラと輝いてる青春時代のことではないのです。半分は、
「俺は、できる。才能がある。大物になってやる。今は、こんなところで燻っているけれど、いつか、オレをバカにした奴らを見返してやるんだ」
という、「根拠のない自信」。
もう半分は、何も実績も成功体験もない、コンプレックスのかたまり。ピンクと灰色が混在している背中合わせの、悩み多き青春。そんな、「気持ち」が、今も、16歳の頃と、まったく変わっていないという意味での「16歳」なのです。

ずっと、ずっと、「いつか、いつか、オレだって」と、もがいて悶えて生きていると、不思議なことに時間が止まってしまって感じられるのです。なかなか、この心境を理解してもらえず、
「16歳です」
と言うたびに、呆れられてきました。

さて、唐突ですが、俳優の柳沢慎吾さんが好きです。不朽の名作「ふぞろいの林檎たち」に出演していたことで知られていますが、「ひとり警視庁25時」の絶妙再現ネタの方が有名かもしれませんね。憎めないひょうきんなキャラで、唯一無比の存在です。笑福亭鶴瓶のトーク番組の「巷の噂」にゲストで慎吾ちゃんが登場した時、こんなことを言っているのに、魅かれました。

「人は15歳から18歳が青春時代。そのあとは、ずっと青春」

なるほど、と膝を叩きました。そうなんです。私の気持ちも同じなんです。たしかに、16歳という青春時代は、終わってしまいました。
でも、「あの頃」と変わりなく、今も「葛藤」「もやもや」「コンプレックス」「悩み」が続いているのです。
つまり、今も「青春」なのです。
常に、
「オレはまだ若造なんだから」
「まだまだ、ゴールはずっと先」
「なんて、オレはダメな奴なんだ」
「どうしたら、コンプレックスを解消できるだろう」
と悩んでいる。それは、けっして、マイナスなことではない。その「悩む心」こそが、心というエンジンのガソリン。16歳のまま、悩み続けているおかげで、「今」にたどり着けたのです。そして、今も相変わらず、悩んでいる。

よく相談事を受けます。それこそ、毎週のように。最近では、大学生、中学生から、「悩み」を打ち明けられます。そんな時、こう言います。
「いいんじゃないの。もっと悩んだら」
「え?!」
相談相手にびっくりされます。
「悩むことは、悪いことじゃないよ。少なくとも、悩まない人よりは成長するしね」
すると、なぜか、パッと明るい表情になる人がいます。
(全員ではないけれど・・・)
「いいんですよね。悩んでも」
「うん、きっと一生、悩むよ。君も僕もね。悩む者同士、友達だね」
「はい!」

「青春」とは、悩むこと。
若いから、悩む。悩むから、成長する。自分が何歳まで生きられるかなんて、誰にもわからない。明日、いや、数秒後に死んでしまうかもしれない。

でも、その瞬間まで、私は16歳であり続けると思います。

悩んでいる人に伝えたい。
「悩んでもいいよ。青春なんだから」

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