ちょっといい話『ビニール傘のご奉公』志賀内泰弘

出先で雨に降られることがあります。
「あれ? たしか折り畳み傘がカバンに・・・」
そうです。書類が多くて重かったので、取り出して家に置いて来てしまったのです。地下鉄から地上に上がると、ラッキーなことにコンビニがありました。ビニール傘を買って難を逃れました。

そんなピンチを救ってくれたビニール傘ですが、ふたたび晴れてしまうと、やっかい者になります。会社や家に戻れば、ちゃんとした傘があるのですから、それこそ二度と使うことはありません。こうして、勤め先や家に、何本ものビニール傘がたまることになります。

この眠ったビニール傘。ごくごく稀に、目覚めることがあります。訪問客と長時間滞在しているうちに、雨が降り出してきた場合です。
「どうぞ、これお使いください。お返しいただかなくても結構ですから」
と言われると、遠慮なく借りることができます。でも、これは珍しいケース。日本中に、使われないビニール傘が多量に眠っているもの思われます。

さて、ダイヤモンド社の土江英明編集長にお目にかかった時のことです。私が、「プチ紳士・プチ淑女を探せ!」運動という、小さな小さな親切を広める活動をしていると言うと、「実は、この前こんなことがありました」と少しうつむき加減で話されました。

ダイヤモンド社さんのビルは、一階の入り口の庇が長く、雨宿りにはもってこいの構造になっています。急に雨が降り出すと、大勢の人たちが駆け込んできます。原宿や表参道が近いので観光客が多いのです。

さて、ダイヤモンド社さんにも、たくさんのビニール傘がたまって、その扱いに困っていました。もったいないけれど、誰も使わずたまる一方ですから置き場所に困る。ときどき、やむをえず処分していました。

ある日、突然の夕立。その時、土江さんは、ハタとひらめきました。ビニール傘を抱きかかえて、一階に降ります。そして、雨宿りしている外国人旅行客や地方からの観光客の方たちに、差し上げたのでした。

もちろん大喜びで、ビニール傘を差してふたたび観光に出掛けられたそうです。みなさん、ちょっとびっくりして、そして笑顔になるので、こちらもとっても幸せな気持ちになります。「また早く夕立来ないかな」などと、思ったりもしてしまいました。

そのままなら、処分せざるをえないビニール傘が、海外からのお客様の役に立つ。東京オリンピックを前にして、「エコ」と「おもてなし」の一石二鳥。とてもステキなアイデアだと思いました。

きっと、全国には、途方もない数のビニール傘が会社や家に眠っているはずです。もう一度、そのビニール傘をご奉公に出す仕組みができないかと思いました。

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